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(中)物流 経済優先 計画前倒し
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 「神戸線の通行不能は県民生活に大きな打撃を与え、社会的、経済的影響は計り知れないものがあります。一日も早い復旧を心よりお願い申し上げます」

 三月初め、阪神高速道路公団の三好逸二・計画部長の机に六枚の要望書が届いた。貝原俊民兵庫県知事ほか、神戸、芦屋、西宮、尼崎各市長と神戸商議所会頭からだった。

 その半月後、公団は復旧工事を急ぎ、九六年中に全通させると発表した。

 当初、復旧には三年かかるといわれていた。しかし、建設省の兵庫県南部地震道路橋震災対策委員会が中間報告をまとめるより早く、同省は二月末に復旧仕様を公団に提示、予想以上の前倒し計画になった。その間の事情を公団幹部は「建設省の復旧仕様が事実上のゴーサインになったが、正直、こんなに早く出るとは思わなかった」という。

 神戸線が崩壊して、神戸・大阪間は大渋滞が続いた。震災前、神戸線と国道43号、2号線の上下計十六車線には一日二十五万台が走行。そのうち、神戸線の四車線に四八%の十二万台が集中していた。

 43号、2号線は「復興道路」として規制され、今、中国自動車道や阪神高速湾岸線、山手幹線などに車が殺到している。渋滞解消の抜本策を求める声は強い。復旧を急ぐ背景には、こうした物流の問題、経済性が指摘された。

 震災で、神戸線は橋脚千百七十五本のうち、八百十本が大小何らかの損傷を受けた。復旧計画では、倒壊区間の橋脚を含む百六十本を再構築することになった。

 新たな橋脚は横揺れに強い、断面がだ円形の「流線板形式」などにする。同形式は名神高速道路で採用されている。「ピルツ」の反省から、単独の橋脚の上に、路面となる床板を両側に取り付けていく。三重の主鉄筋は四重に、帯鉄筋の量も三倍に増やす。さらに鋼板を巻き付ける。「鋼板を巻き付けることで、コンクリートの崩れを防ぐ」と町田篤彦・埼玉大教授(コンクリート工学)もその効果を説明する。この手法は山陽新幹線の橋脚復旧でも基本的に使われた。

 このほか、過剰な連結構造を解消するとともに、衝撃で橋げたが落ちないよう落下防止板を取り付け、また、橋脚柱から橋げたに直接衝撃が伝わらないよう、ゴムと鉛製の「免震支承」も採用することになった。

 こうした復旧計画の発表で、公団は「今回の地震で観測された最大の揺れに耐えられるようにする」と、耐震強化を強調した。

 だが、残る橋脚については「第三者を交えた公団内部の技術委員会の調査で、再利用できると判断している。必要なら補強も検討している」とし、なぜ倒れたのか、との疑問には「国の最終調査結果を待ちたい」とするばかりだ。

 神戸線や下の国道43号線を走行中に巻き込まれ、十六人が命を亡くしたが、長男を失った大阪府豊中市、会社員渋谷昌隆さん(48)は「管理者である公団から倒壊原因や復旧に関する説明は一言もない」と、公団の姿勢に疑問を投げ掛けた。

1995/5/10
 

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