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(2)ボランティアと資金 寄付のメリット提示を 収支の透明性も
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 ボランティア活動とお金。一見、対極にあるようで、実は切り離せない問題だ。被災地では、多くの団体が資金難を訴え、活動の継続にも影響が出ている。そうした活動を支えようと、与党三党も「市民活動促進法案」(NPO法案)の検討を進めている。ボランティア団体と資金をどう考えるか。三十年の歴史を持ち、震災後約一年間、「被災地の人々を応援する市民の会」を開設した大阪ボランティア協会の事務局長、早瀬昇さん(41)に聞いた。

大阪ボランティア協会事務局長・早瀬昇さん

 ボランティア団体の運営は、企業の経営に似ていると思いますよ。いわば非営利の自営業。

 僕らには、二種類のカスタマー(顧客)がいる。われわれが応援する人と、われわれを応援してくれる人と。双方のお客さんに、メリットを感じてもらわないといけない。

 われわれを応援してくれる人、つまり、資金を出してくれる個人や企業にとってのメリットは何か。「あの団体に渡せば、ちゃんと使ってくれる」「自分の出したお金が多様な事業に使われている」と感じてもらうことなんですね。

 逆にいえば、「あの団体に寄付したい」と思わせるだけのビジョンを持っていれば、資金は集まる。

 震災後に生まれたボランティア団体も、まず、そのビジョンを明確にすることが大切だと思う。被災地の状況がだんだんと変わっていく中で、自分たちの団体は本当に必要かを、自己評価する。常にそうしていれば、資金は何とかなるし、活動も続けられる。

 そして、大切なのが資金の出入りの透明性。支援をしてくれる人、活動しているボランティアに対する情報公開です。これがあってこそ、リーダーシップも発揮できる。

    ◆

 大阪ボランティア協会が設立された三十年前と違って今、ボランティア団体が支援を得るための情報はあふれている。企業も「良質の寄付をしたい」と思っている。「会社で募金を集めたから寄付をしたいが、どの団体がいいか」という問い合わせがよくある。「何かしたい」という気持ちは持っているんですよ。

 市民にも、「どうせなら社会的に役に立つ『消費』をしたい」という感覚が広まっている。郵政省の国際ボランティア貯金(利子の二割が国際貢献のボランティア支援に使われる)に、多くの人がお金を預ける時代ですから。

 ただ、どんなボランティアを、どう支援すればいいかということが、一般の人には、なかなか見えない。だから、こちらからいろいろなメニューを提示する必要がある。企業でいえば「商品開発」をして、お客さんの前に出すのと同じですよね。

    ◆

 ボランティア団体に法人格を与えて支援しようと、NPO法案づくりが進められています。

 今はほとんどが任意の団体で、法的に認められた存在ではない。団体として事務所を持ち、口座を開くことさえできない。そこに法人格を与え、さらに財政面を支援する税制上の優遇措置も考えよう・というわけです。

 しかし、最近出された自民党試案は、法人格を認める条件に政治性を持たないことを挙げている。「反原発」とか、行政の政策に反対する団体は外される可能性がある。

 NPOの目標は本来、役所ではつくれない市民社会、多様な価値観が共存できる社会をつくっていくことでしょ。政策提言をすることだって、もちろんある。それが認められない。

 まず、そういう条件をつけることの問題点を議論しなきゃだめです。法案のままじゃ、単なる善行奨励法になってしまう。税制優遇など財政面の支援の問題は、その後の議論になると思います。

1996/5/6
 

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