今も被災地で一日約六百人が活動を続けるボランティア。組織だって活動する各団体に、資金の問題が重くのしかかってきている。年間一千万単位の運営費が必要だが、全国の関心が薄れる中で、寄付も先細りになっているからだ。「ボランティアは無償という感覚が根強いが、継続性、専門性を持てば資金の問題を避けて通れない」と各団体。会費制を導入したり、社団法人化を目指すなど資金面の模索を続けている。(磯辺康子)
電話代もガソリン代も
阪神大震災地元NGO救援連絡会議によると、被災地支援のボランティアは現在、兵庫県内に約百団体。事務所を構え、活動しているのは二十程度という。そうした団体の活動費の実情は表の通りで、仮設住宅支援、福祉的サービスなど幅広く対応するところは、年間千万円以上の経費がかかっている。
多くの団体が負担に感じているのが事務・管理費だ。東灘・地域助け合いネットの代表幹事、中村順子さんは「管理費と活動の事業費がほぼ半々。行政や企業の視察も多く、資料の用意にも経費がかかる」と話す。通信費もかさみ、「がんばろう!!神戸」では月平均約十三万円にのぼる。
「ちびくろ救援ぐるうぷ」はガソリン代、通行料などの車両維持費が月約二十万円。「ボランティア個人の車を使ってもこれだけの出費」という。
事務費への理解不足
収入の多くを占める個人や団体の寄付は減少し、活動継続に新たな手立てが必要という悩みは共通している。
阪神・淡路大震災復興基金などによる助成の中身についても、ボランティアらは「形の見える事業への助成が主流で、事務経費の必要性が理解されていない」と口をそろえる。
各団体は資金ねん出に知恵を絞り、阪神高齢者・障害者支援ネットは、六月から年会費二千円の会員制を導入、専従スタッフを減らし、事務局費の節約も徹底する考えだ。日本災害救援ボランティアネットは、社団法人化を目指し、年会費三千円の個人会員、五万円の法人会員を募集。被災地障害者センターはTシャツなどチャリティーグッズ販売を続けている。
質の継続には
常駐の有給スタッフを置くところも多いが、事務費と同様、その必要性も理解されにくいという。
曹洞宗国際ボランティア会(東京)の神戸事務所責任者、市川斉さんは「国際協力では『百万円のモノを生かすには百万円の資金がかかる』といわれる」と話し、「海外には数百億円の予算で多くのスタッフをかかえるNGOもある。日本ではコーディネートなど、目に見えないものに対する資金の必要性が認識されていない」と指摘する。
震災後、与党はボランティア支援の市民活動促進法案(NPO法案)を検討。寄付する側の税制優遇措置などが議論されている。阪神高齢者・障害者支援ネットの中辻直行さんは「優遇措置があるから寄付が集まるものでもない。法律はボランタリーな活動を広く『文化』として定着させるものに」と提言。
地元NGO救援連絡会議の草地賢一代表は「専門性を持ったスタッフがいなければ、ボランティアは定着しない。多くの人が被災地で活動した量的な面で『ボランティア元年』という言葉が生まれたが、今後は質に目を向けていくべきだ」と強調している。
被災地のボランティア団体の財政状況 | ||||
団体名 | 場所 | 年間活動費 | 収入 | 資金運営の現状・課題 |
がんばろう!!神戸 | 神戸市北区 | 100万円 | 寄附金89% 助成金11% | ボランティアの交通費、食費を一切出さずにこれだけの支出。 連携している小グループの支援が課題 |
ちびくろ救援ぐるうぷ | 神戸市兵庫区 | 2000万円 | 寄附金44% 助成金12% 自主事業44% | 全国からのカンパと講演の謝礼で何とか資金を確保。 助成金が増えなければ、今後の運営は難しい |
日本災害救援ボランティアネットワーク | 西宮市 | 4000万円 | 寄附金60% 助成金20% 自主事業20% | 小規模のボランティア団体に事務所を開放しており、維持費の負担は大きい。 助成金を積極的に活用 |
阪神高齢者・障害者支援ネットワーク | 神戸市長田区 | 2500万円 | 寄付金90% 助成金10% | 今年度は750万円の予算で運営。 6月から会費制を導入。 資金を生かすマンパワーも大きな課題 |
阪神大震災地元NGO救援連絡会議 | 神戸市長田区 | 4500万円 | 寄付金100% | ボランティアネットワークの財政支援、総合事務所的な役割が大きい。 サハリン地震の救援も |
東灘・地域助け合いネットワーク | 神戸市東灘区 | 1600万円 | 寄付金36% 助成金64% | 助成金の申請などが煩雑で、専従の事務スタッフは不可欠。 特定の寄付に頼らない資金運営を目指す |
被災地障害者センター | 神戸市兵庫区 | 3500万円 | 寄付金90% 助成金5% 自主事業5% | 個人寄付が減少。 障害者に対する行政の支援不足をボランティアがカバーしている現状を知ってほしい |