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(3)情報の共有 住民と行政 同じ土俵に
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 既に五カ月がすぎた。神戸市からはまだ、何の連絡もない。

 「市がこの街の課題をどう考えているのか。知りたいのだが」と佐藤三郎さん(64)=神戸市須磨区南町二=は不満を口にした。

 佐藤さんは、西須磨まちづくり懇談会の事務局長を務める。神戸市須磨区南部百八十ヘクタールをエリアとする地域は、須磨海岸の景観でも知られる。全壊は二割、半壊は三割近くに上るが、区画整理事業の対象にはなっていない。決まったのは、主要道路の拡張を市が買収方式で進めることだけである。

 懇談会は月に一、二度、会合を持ち、その道路の必要性を含めた街づくりの勉強会などを重ねている。

 佐藤さんが待つのは、市の情報公開は不十分だと異議を申し立て、昨年七月末、公文書公開審査会で意見陳述した結果である。「西須磨地区整備計画調査報告書」の原則全面公開を求める佐藤さんは、陳述でこう述べた。

 「震災で大きな被害を受けた地域の復興は時間との競争だ。自分たちの街の課題を十分に知らず、それぞれに復旧を進めれば、将来の街づくりに支障が出る」

    ◆

 市がコンサルタントに委託した「調査報告書」は、一九八九年度から九三年度まで五年分ある。

 この間、市はまちづくり条例にもとづく「協議会」の発足を提案したが、多くの住民が「行政主導の街づくりでは」と反発、協議会発足がとん挫する経過をたどる。震災を経て、今後の街づくりを考える佐藤さんらの懇談会が住民有志らで結成された。

 公開請求に対し、市は九一、九二年度分を全面非公開、残る三年分は一部のみ公開した。

 非公開の理由として「条例第7条1、2、6号に該当する」とした。1、2号はプライバシーの問題、6号は「意思形成過程の情報で、公開すれば誤解などが生じ、公正、適切な意思形成に著しい支障が生じる」とする。

 示された部分公開の報告書は、非公開部分が白く消されている。第2章の「整備課題の整理」から第4章の「整備手法の検討」まで、第3章の数ページ分が飛び、目次の部分も空白だ。柱立ても分からない。

 学識経験者らの公開審査会にかかった後、市は「震災による庁舎被災で、八九年度分を除く文書は消失した」とも審査会に報告した。

 佐藤さんは話した。「目次までなぜ伏せるのか。青写真が崩れないところまでいかないと公開しないのが市のやり方。意思形成過程という言葉でひっくるめてしまう」

    ◆

 昨年十一月下旬、「市民オンブズマン兵庫」が発足した。公文書公開条例などを活用し、行政を監視していこうという趣旨だ。

 自治体の食糧費公開などを進めてきた大学講師の森池豊武さんら八人が代表世話人になった。メンバーには、被災者を支援しているボランティア団体代表らもいる。

 復興街づくりを法律や建築、都市計画など専門的な立場から支援する「阪神・淡路まちづくり支援機構」の代表委員、広原盛明・京都府立大学長(住宅・都市計画)は指摘した。

 「税金を使った調査内容は対象の住民に公開すべきだ。住民参加、住民主体の街づくりは、住民と行政が情報を共有するところから始まる。そこから議論が起こる。情報の共有がない『住民参加、住民主体』は、単なるスローガンに終わる」

1997/1/5
 

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