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 「いま、阪神・淡路大震災に遭った街はどうなっている? こちらじゃ、もう話題にもならないけど」。四度目の一月十七日を前に、そんな便りを、東京の人からもらう。あなたなら、どう返事する? ◆語ればきりがなく、この過酷で、多様で、複雑な災厄を語り尽くせる者がいようとも思えない。たとえば年の暮れ、神戸の夜にあふれた「光」のことを話そうか。「慰霊と希望の光」とされ、街路や街路樹、ホテル、あちこちの公園に輝いたイルミネーションのことを◆被災地はなぜ、あんなにも「光」を渇望するのだと思う? 自分たちを覆い包む薄暮のような闇(やみ)を、一時でも忘れたいのだ。光を浴びつつ、そぞろ歩く被災者たちには分かっているのだ。六千人を超える犠牲者への悼みが、まだ、この街から消えていないことを◆何千戸という仮設住宅に、まだ暮らしている人々がいること。新築の復興住宅に移り住んでも、交際のない孤独にさいなまれていること。倒産の多さや、求人倍率の低さなど、不況日本の平均よりはるかに厳しい風が、この街に吹きつけていることを◆恐怖と悲哀と、人間愛の高揚も知っている。その後の国や行政への幻滅感、冷たい壁のような現実、復興街づくりの合意の難しさなども。この四年間に、被災者は多くを知った◆そして、神戸では空港建設をめぐって、市民の連帯にぽっかり大穴があいたまま、「一月十七日」が来た。高邁(こうまい)で、骨の太いわが街の未来像が思い描けない、もどかしさ、うつろさ。さまざまな思いをどんな言葉で伝えればいいだろうか。

1999/1/17
 

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