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 阪神・淡路大震災の被災地に、鎮魂と希望を込めてともり続ける「1・17希望の灯(あか)り」。その火を受け継ぎ、各地へと届ける人の列が十六日、灯りのある神戸・三宮の東遊園地に続いた。昨年、遺族らが震災五年の思いを込め、手を携えてともした灯り。今年、その火を市民に届ける側に二人の女性がいた。ともに長男を亡くした神戸市東灘区の藤本東美子さん(56)、豊岡市の足立朝子さん(64)。寒風の中で、二人は息子のセーターに身を包み、灯りにのせた「心」を手渡した。きょう十七日、震災から六年を迎える。

 午後二時。各地で追悼行事を開く市民ら二十四人が集まり、「分灯式」が始まった。

 二人もその輪の中にいた。昨年一月十七日、ともにこの「希望の灯り」に、最初の火をともした。灯りを提案したボランティア団体「がんばろう!!神戸」の堀内正美代表(50)との出会いが、互いを結びつけた。

 昨年、藤本さんの心はまだ沈んでいた。震災四年までは、自宅で静かに迎えた十七日の朝。五度目の震災忌、勇気を出して他の遺族やボランティアの中に飛び込んでいった。

 自分と同じように子供を失った遺族との出会い。数カ月に一度、被災地の慰霊碑を訪ね歩く行事にも参加し、交流は広がった。

 今年の一月十四日、七回忌法要で、亡くなった長男・直人さん=当時(23)=の親友に言われた一言がうれしかった。

 「お母さんが頑張ってるの分かってるから、ナオもきっと喜んでるよ」

 この一年の自分の心の変化を、じっと見つめてくれていたことに感謝した。

 足立さんもまた、遺族との出会いで癒(いや)されてきた。被災地から離れた豊岡。「いつまで震災のことを」という周囲の空気を敏感に感じる。が、神戸に来て「灯り」を見ると心が温かくなる。「自分が励まされ、助けられたぶん、できることでお返ししたい」。そう思い続けてきた。

 昨年点灯式に参加した遺族らは月一回、「希望の灯り」の清掃を続けてきた。昨年末も、二人はガス灯のすすをぬぐい、ガラスをふき、周囲の石を磨いた。

 そして迎えたこの日。二人は、被災地に立つ慰霊碑の地図「震災モニュメントマップ」を、笑顔で一人ひとりに手渡していった。

 「こんなにたくさんの人が来てくれてうれしい」と藤本さん。「震災が忘れられることが一番つらい。体が続く限り、自分も毎年ここに来たい」と足立さん。

 遺族と被災地の心を結びつけた「灯り」の前で、二人はともに十七日の夜明けを迎える。(磯辺 康子)

    ◆

各地で追悼式

 十七日、被災地を中心に数多くの追悼と記念の行事が開かれる。被災自治体の公式行事や自治会、商店街ごとの追悼式、市民の集い、防災訓練…。遺族が一人、娘のかつての住まい跡に祈りをささげる七回忌もある。

 兵庫県などは朝から「1・17ひょうごメモリアルウォーク」を主催。正午前から神戸市中央区の神戸東部新都心で「追悼のつどい」を開く。神戸市は午前五時から三宮の東遊園地で「追悼の集い」。午後五時半には、メリケンパークで復興記念事業を開幕させる。

2001/1/17
 

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