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(3)都市水害 地下空間に新たな弱点
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新式の止水板。混乱の中でも、一つひとつ人間が設置する=神戸市営地下鉄新長田駅
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新式の止水板。混乱の中でも、一つひとつ人間が設置する=神戸市営地下鉄新長田駅

新式の止水板。混乱の中でも、一つひとつ人間が設置する=神戸市営地下鉄新長田駅

新式の止水板。混乱の中でも、一つひとつ人間が設置する=神戸市営地下鉄新長田駅

 東京・霞が関。昨年末、国土交通省の小部屋に、河川局職員ら数人がこもっていた。

 近年、街の中心部で頻発する「都市型水害」。その対策を盛り込んだ「特定都市河川浸水被害対策法」が四月に施行される。政令策定などの準備が急ピッチで進む。

 「宅地開発や、局地的な豪雨の多発。人と資産の集中する場所で水害が起きるようになった」と、同局都市河川室の塩澤賢一課長補佐はいう。

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 地震だけではない。自然災害。人の命を守る取り組みは万全ではない。

 一九九九年六月、福岡市のJR博多駅周辺で起きた豪雨災害は、都市型水害の脅威を見せつけた。中でも都市の脆弱(ぜいじゃく)さをさらけ出したのが、地下空間だった。

 駐車場の出入り口から、ビルに濁流が入り込んだ。地下の飲食店で女性従業員が逃げ遅れ、死亡した。

 福岡市は、市内のビル所有者に「止水板」設置などを要請した。しかし法的規制はなく、思うように進まない。

 昨夏にも、同じ地域が浸水した。三連休初日、土曜の未明。止水板はあっても、動かす人手がなかった。

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 九九年の博多駅周辺の浸水と同じ日、神戸市では新湊川がはんらんした。地下浸水の危険性は、どの街にも潜む。

 一日延べ約二十万人が往来する神戸・三宮の地下街「さんちか」。止水板などの防水設備は、同地下街につながる地上出入り口の六十カ所以上すべてにある。

 大半は、階段降り口に、木やアルミの板をはめ込むタイプ。板一枚は十キロを優に超える。水が迫れば、倉庫から取り出し、人の手で運ぶ。

 弱みは、現場を担う職員の高齢化だ。「六十歳以上の嘱託職員も多い」と、さんちかを管理する「神戸地下街」の宮清・施設管理部長。水で膨らむ方式の“軽い土のう”を最近導入した。

 南海地震で津波による浸水が想定される同市南部には、市営地下鉄海岸線が走る。全駅に設置された止水板は、床面に埋め込まれた新式。津波到達まで約一時間半あるが、地震後のパニックの中で板を作動させ、すべての乗客を誘導しなければならない。

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 「日本の地下空間は、水害を想定して造られていない」と京都大学防災研究所の戸田圭一助教授。これまで、法規制の対象とされてきたのは、主に「火災対策」だった。

 新法の「特定都市河川浸水被害対策法」は、指定流域で、地下の管理者に避難計画の作成・公表を求める。

 その計画作成のための手引書づくりに当たる「地下街等浸水時避難計画策定手法検討委員会」。委員の一人で、大阪駅前の地下街・ディアモール大阪を管理する「大阪市街地開発」の河向七朗・防災担当主幹が言う。

 「個人のビルでは、金がかかる止水板の設置は簡単ではない。国レベルでの対応を」

 大都市に張り巡らされた地下空間。一つでも「穴」があれば、水はそこから人を襲う。

2004/1/14
 

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