朝はパンかおにぎり、昼と夜は弁当。これが避難所の食事だった。
弁当のおかずは日持ちのする揚げ物と焼き物。ご飯は冷たくなっていた。おにぎりを炊き出しの雑炊にしてしのぐ。
ある夕食時、取材で知り合った家族を避難所に訪ねた。「魚や野菜が不足気味。血圧が心配です」。妻が訴えた。
神戸市から弁当製造を請け負った「淡路屋」。配達に走り回った従業員に不満の声が寄せられた。「脂っこいものばかり」
本社兼工場は東灘区にある。水とガスが止まった。仕入れ先が被災、食材が足りない。それでも「食べる人の負担にならないように」と話した。
メニューに工夫を凝らした。煮っころがし、酢豚。自然と野菜を使うようになった。
社員は思いを込めて「復興弁当」とよんだ。
今、健康志向。弁当のおかずに野菜は欠かせない。製造担当の秋山照夫さん(60)が言った。「あの時の経験が生きています」
避難所で聞いた声が今も胸にある。
(写真部 藤家 武)
2004/5/11