震災から三年目の秋だった。神戸市西区の仮設住宅で催された運動会をのぞいた。玉をかごに投げ入れ、明るく笑い合う光景が広がった。
参加者の多くは高齢者。部屋に戻ると、話し相手もなく、黙り込む人が多いと聞いた。
とにかく部屋から出てきてもらおう。住民自ら知恵を出し合って企画を立てた。炊き出し、バザー。文化祭なんてのもいいかも。その一つが運動会だった。
「おしゃべりするだけで気分が変わるんです」。運動会で、そう話すお年寄りがいた。
同じ風景に最近、出会った。同市灘区の「HAT神戸・灘の浜」。
震災後にできた街。復興住宅が並ぶ。入居者のうち六十歳以上が七割を占める。
約三年前、住民の婦人グループが「ふれあいサロン(喫茶)」を始めた。五十円でコーヒー一杯とロールパン一個。月二回の集いに、毎回百人以上が足を運ぶ。
夏祭り、もちつき大会。イベントの数は、年に二十回を超える。なぎさふれあいのまちづくり協議会の坂本一夫委員長(78)が言った。
「誰かと出会う。その楽しみが、きっと生きがいになる」
仮設住宅の記憶と知恵を生かす。社会が潤う。
(写真部 岡本好太郎)=おわり=
2004/5/14