「目まいがするんや。朝から三回も続いた」
芦屋市南部の埋め立て地。南芦屋浜復興住宅のシルバーハウンジングの一室で、坂田明さん(74)は、別棟の集会所に詰める生活援助員(LSA)に電話で訴えた。看護師の資格を持つLSAが血圧測定器を持って走る。
「LSAがいつもいるから安心」。震災で共同住宅が全壊し、妻=当時(58)=を亡くして一人暮らしの坂田さん。持病の悪化で意識を失い、十二時間水が使われず緊急通報装置が作動し、LSAが駆けつけて一命を取り留めたこともある。
被災地に百七人いるLSA。シルバーハウジングに派遣され、高齢入居者の相談や安否確認などを業務にする。復興住宅約二万五千戸のうちシルバーハウジングは八十一団地、三千九百七十一戸。主に午前九時から午後五時をカバーする。
南芦屋浜には、二百三十戸のシルバーハウジングがある。全国的に珍しい二十四時間体制で、精神障害者やアルコール依存症者もフォローする。
全国から視察が続く。だが、財源の問題もあり、県内でほかに広がる動きはない。
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復興住宅の見守りで、LSAと並んで重要な役割を担うのが、二〇〇一年度に導入された高齢世帯生活援助員(SCS)。百二人分の年間予算二億八千五百万円は、阪神・淡路大震災復興基金が財源。基金は〇五年三月に事業展開が終わる。
井戸敏三兵庫県知事は「国に支援を要望しているが、(支援がなくても)県の単独事業として続けたい」と継続に意欲を見せる。
七十八人のSCSを抱える神戸市は、違う道を模索する。同市は、SCSのほか七十七カ所の在宅介護支援センターに見守り推進員を一人置く。両者が担当する約三千六百世帯について、地域での見守りが可能な人は地域に任せる方針を立てた。
「すべての見守りを『公』がすれば、財政破たんは免れない。地域との分担が必要」とする。
LSAやSCSの役割を評価する松原一郎関西大教授(社会福祉学)は、「超高齢社会には、新しい仕組みが必要。だれが費用を負担し、どこまで支援するか。それぞれの地域で考えねばならない」と指摘している。
メモ
親族・友人、近所の人以外に訪ねてくる人
入居者の8割前後が、生活援助員(LSA)や高齢世帯生活援助員(SCS)、民生委員、ボランティアの訪問を受けていない。見守り訪問の評価は、「迷惑」はごく少数で、訪問自体は歓迎していることがうかがえる。