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(4)コミュニティー 3者力合わせて再生を
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 カラフルなクロスのかかったテーブルで、コーヒーとパンを前に、話に夢中の高齢者たち。神戸市灘区の「HAT神戸灘の浜」のなぎさ地域福祉センターで、月に二回開かれる「ふれあい喫茶」は、いつもにぎやかな声に包まれる。

 切り盛りするのは、六十-七十歳代の女性約三十人のボランティア。参加者は毎回約百人に上る。コーヒーを出す江野畑アヤコさん(69)は、「お世話できる間は幸せね。いつかは私もお客さん」と笑う。ここでは集うのも支えるのも高齢者だ。

 神戸市が「東部新都心」と位置付ける灘の浜。分譲マンション以外の市営、県営など賃貸住宅十三棟千八百八十六世帯が被災者向けに造られた。

 一九九八年春の入居時から、地域福祉センターで市職員らが住民の相談を受け、イベントを企画。住民運営が通例の地域福祉センターも、灘の浜では「極めて異例」の“市営”でスタートした。

 一年半後、老人会、子ども会などの代表者らでつくるなぎさふれあいのまちづくり協議会が、市から同センターの運営を引き継いだ。「コミュニティーは住民がつくっていかなきゃ」と同協議会の委員長坂本一夫さん(79)は積極的に催しを開く。

 同志社大の立木茂雄教授(社会学)は「行政支援が有効に働き、住民が自分でやらなければと立ち上がったのが大きかった」と分析する。

 だが、すべての復興住宅が順調なわけではない。県の調査では、とりわけ市街地にある二百戸未満の中小規模の団地で、コミュニティーづくりの難しさが、課題として浮かんでいる。

メモ

震災前と現在の近所づきあい

 震災前には46.7%が「とても楽しい」か「まあ楽しい」と感じていた近所づきあいが、現在は13.9%に低下した。「少し寂しい」と「とても寂しい」の合計は、2.5%から18.0%に増加。コミュニティーづくりの難しさが浮かぶ。

    ◆

 NPO法人「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」が〇四年六月、神戸市須磨区の復興住宅の一室で、「何でも相談」を開設した。市営住宅の空き室を市民団体に貸し出すのは初めて。目的外使用に当たるが、高齢者を支えるには必要と、神戸市が踏み切った。

 黒田裕子理事長は「高齢化はさらに進む。コミュニティーにうまくなじめない人も支援したい」と目的を話す。

 住民とボランティアと行政。三者がどう補い合うか。低所得者への対応、見守り、コミュニティーづくりなどの課題は、近い将来に必ず訪れる超高齢社会に通じている。

(網 麻子)=おわり=

2004/12/21
 

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