阪神・淡路大震災の復興土地区画整理事業を円滑に進めるため、各地区で活動してきた「まちづくり協議会(まち協)」が、その役割を変えようとしている。大震災から十三年を経て、事業がおおむね一段落したためだ。衝突する個人の利害を調整し、行政と対峙(たいじ)した震災後の活動から、コミュニティー形成のための息の長い取り組みへ。活動の担い手確保や、新住民との融合などの課題を見据えつつ、新たな模索が始まっている。(徳永恭子、石崎勝伸)
公共施行の事業が実施された十八地区のうち十四地区で完了する中、まち協も全体の半数に当たる九地区で解散(予定を含む)または活動を休止している=表参照。それに伴い、住民同士の交流行事などソフト面のまちづくりも収束した地区が見られるが、一方で、事業完了後もまち協が存続して交流行事などを継承したり、他団体に引き継いだりしている所もある。
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二〇〇六年三月に事業が完了した神戸市灘区の六甲道駅北地区(一六・一ヘクタール)。天窓のある開放的な木造集会所「風の家」が目を引く。同地区まちづくり協議会連合会が提案を重ね、住民の意見を反映させた成果の一つだ。
この集会所を運営する「風の家くらぶ」は貸し館のほか、七夕祭りやチェロコンサート、年末のカウントダウンイベントなどを主催。毎回、多くの住民でにぎわう。
同くらぶのように、施設や活動ごとに住民組織が誕生した。このため、同連合会は指導的な立場から連絡調整の場に変わりつつある。
まち協役員で、同くらぶ議長も務める四茂野尚樹さん(56)は「震災後に生まれた住民同士の結束は大切な財産。ただ、地域の活動の担い手が固定化しつつある。十年先を展望し、新しい住民や若い世代を巻き込みたい」と話す。同くらぶの中心となる十人の幹事には、あえて七十歳の“定年”を設けた。イベント参加者から、担い手となる人材を発掘したいという。
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同市長田区の鷹取東第一地区(八・五ヘクタール)は公共施行で最も早く、〇一年二月に事業が終わった。まち協は活動休止し、自治会ごとに催しをするなどの形で取り組みは継承されている。
日吉町五丁目自治会では今月十七日、地元住民が地蔵堂のあるポケットパークで震災犠牲者の慰霊祭を開き、百人近くが炊き出しを囲んで交流した。同自治会長の石井弘利さん(66)は「防災や防犯、福祉などのまちづくりは、小さな自治会単位では限界がある」と話し「まち協の枠組みで活動するのが理想」と幅を広げた取り組みを模索する。
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今年秋にも事業が完了する見通しとなっている西宮市の西宮北口駅北東地区(三十一・二ヘクタール)。まち協や小学校区内の各種団体が一体となり、地区中央部にある「高木公園」を核とした新しいまちづくりを目指す。
芝生や遊具、防災機能を備えた一ヘクタールの公園は、震災直後の計画当初、「そんな大きな公園はいらない」と住民から反対の声が上がった。被災した土地所有者が一定の土地を出し合う「減歩」で生み出される公園だったからだ。
「賛否をめぐる激論の末、『造るんだったら理想の公園を』という思いで計画を作成した」とまち協副会長の土井成三さん(53)は振り返る。
同地区周辺は、マンションの建設ラッシュで新住民が激増した。公園の祭りやイベントは親子連れでにぎわう。土井さんは「最初は『観客』でもいい。地域を考える人が少しずつでも増えていってほしい」と期待し、行政には「住民がまちづくりを頑張れるように、仕掛けを考えてほしい」と注文を付けた。
2008/1/27