連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

(1)開拓者 「飾り」で市場を創出
  • 印刷
「シューアクセ」を発案した谷山貴彦さん。ユニークな発想で業界の常識を破る=神戸市長田区苅藻通1
拡大

「シューアクセ」を発案した谷山貴彦さん。ユニークな発想で業界の常識を破る=神戸市長田区苅藻通1

「シューアクセ」を発案した谷山貴彦さん。ユニークな発想で業界の常識を破る=神戸市長田区苅藻通1

「シューアクセ」を発案した谷山貴彦さん。ユニークな発想で業界の常識を破る=神戸市長田区苅藻通1

 阪神・淡路大震災から15年。大きな被害を受けた神戸・長田の靴業界は、その後も安い中国製品との競争や消費低迷などに見舞われた。しかし最近、従来の靴づくりの枠を超える新たな動きが目立ち始めた。長田を基盤に広い市場を目指す挑戦者たちを紹介する。

    ◆

 「ほら、こうやって付け替えると靴の印象がガラリと変わる」

 ケミカルシューズメーカー三倉(神戸市長田区)の専務谷山貴彦(36)は、バラの花びらやタンポポの綿毛のような形をしたアクセサリーを手にして、自慢げに笑った。どれも小さなクリップが付き、簡単に女性靴に取り付けられる。

 同社が昨年8月に発売した、着脱可能な靴飾り「シューアクセ」。「1足で何足分も楽しめる」と若い女性が飛びつき、百貨店など全国へ販路が広がった。類似品も次々と現れ、靴業界からは「約10年前の厚底靴、1年前のおしゃれ長靴に並ぶブームになるか」と期待の声があがる。

 考案者の谷山は、神戸・長田でケミカルシューズメーカーを営む家庭で育った。高校卒業後、語学の習得を目指してアメリカに渡った。

 留学中に阪神・淡路大震災が発生し、実家の靴工場は全壊した。しかし、両親は苦しい中でも留学を支援してくれた。谷山は1998年に帰国したが「苦労している両親を支えたい」と家業を継ぐ道を選んだ。

 ただ、想像以上に現実は厳しかった。安い中国製品に押され、売り上げは落ち込む一方。従来通りの相手先ブランドによる生産(OEM)だけでは未来はないと思うようになった。「売れる靴を自分で考え、自分で販路を切り開きたい」。留学で身につけた開拓精神が首をもたげた。

 試行錯誤しながらオリジナルの靴を制作。納得のいく見本品が出来上がり、飾り選びに頭をひねっていた時のことだ。「お客さん自身に、好きな飾りを選んでもらうのが一番いいのでは」とひらめいた。

 靴とアクセサリーの組み合わせを自由に楽しめるという斬新なアイデアは、発売直後から反響を呼んだ。売り上げは当初見込みを大幅に上回り、他のメーカーもこぞって新市場に参入した。

 「アイデア次第で、国産も十分勝負ができる。成功にあぐらをかいていては駄目」と話す谷山。今は、奈良県の女性向け靴下メーカー会社と連携し、靴とセットで組み合わせを楽しめる靴下の開発を進める。靴と同じく安い外国製に押されている靴下業界も、新たな動きに注目する。

 独自の発想で、靴業界に風を吹かせた谷山。「レギンスなどのデザインも手がけ、女性の足のファッションをすべてコーディネートしたい」と夢を膨らませる。(敬称略、阿部江利)

<ケミカルシューズ> 天然皮革の代わりに合成皮革などで作り、おしゃれな女性靴として人気がある。神戸市長田区が国内生産の中心地。ゴム産業から派生したゴム靴が起源で、生産工程を地域内で分業しているのが特徴。日本ケミカルシューズ工業組合には、1969年に300社が加入していたが、阪神・淡路大震災で多くの企業が被災し、海外流出が加速した。安い中国製品との競争や不況の影響などによる倒産も相次ぎ、現在はピーク時の約3分の1まで減少した。

2010/1/14
 

天気(9月6日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 10%

  • 35℃
  • ---℃
  • 10%

  • 35℃
  • ---℃
  • 10%

  • 36℃
  • ---℃
  • 10%

お知らせ