あの日の揺れは、表参道にあった真新しい大鳥居と、宝永元年(1704)の建立で300年の歴史を誇った本殿前の鳥居をへし折った。
砕かれた御影石の柱は、今も断面を天に向けている。二つの柱をまたいでいた「笠木(かさぎ)」も地に横たわる。伊丹市北部の天日神社(てんにちじんじゃ)。折れた鳥居は復興を伝える震災記念碑になった。
周辺の荒牧地区は住宅約150戸のうち4割が全半壊し、一帯は区画整理が進んだ。
神社には地域を加護する産土神(うぶすながみ)が宿るとされる。震災後、鳥居はそのまま境内の片隅に置かれていたが2004年6月、記念碑として残す作業が始まった。
まちづくりに取り組む住民グループ「荒牧夢のまち応援団」が企画し、デザインから移設作業まで約100人の住民が関わった。「記念碑を見るたびに、防災への決意を新たにするんです」と寺田勝重団長(61)。
柱は力強く立ち上がり、青空に向かって伸びている。地域を見守る象徴として。
(映像写真部 笠原次郎)
2011/1/13