コンクリートがはがれ落ち、むき出しになった鉄骨がゆがんでいる。神戸市中央区の国道2号沿いに置かれた橋脚のモニュメントは、今も地震のすさまじいエネルギーを見せつける。
神戸の中心部の渋滞を緩和させるため、「国道2号・浜手バイパス」は1986年に開通。同区浜辺通からJR神戸駅前まで、約3キロの海岸線を高架道路で結ぶ。
あの日、激しい揺れに道路が崩れ、72基ある橋脚のうち58基が座屈(ざくつ)するなど、壊滅的な被害を受けた。
新たに橋脚を建設し、一部が再開されたのは翌1996年5月。全線開通までは、さらに2カ月を要した。
直径3・1メートル。当時の爪痕を残した橋脚の一部は、バイパスを見上げるように置かれている。車が行き交う場所で、孫を連れた老夫婦が立ち止まった。
「あんたが生まれる前、おっきな地震があったんや」。祖父の語りかける声に、橋脚をなぞっていた男の子がうなずく。
街のあちこちに語り継ぐ場所がある。
(映像写真部 岡田育磨)
=おわり=
2011/1/15