6434人が亡くなった阪神・淡路大震災は17日、発生から丸16年を迎える。兵庫県内各地では多くの追悼行事が行われ、被災地は終日、祈りに包まれる。
神戸市中央区の東遊園地では、午前5時から、市民団体と神戸市などが「阪神淡路大震災1・17のつどい」を開催。竹筒にろうそくをともし、地震発生時刻の同5時46分に黙とうする。
兵庫県などによる「ひょうご安全の日 1・17のつどい」は午前11時50分から、神戸市中央区の人と防災未来センター前で開かれる。政府からは松本龍防災担当相が出席する。
17日前後には県内の1300を超える学校園で、防災訓練や震災を語り継ぐ行事が予定され、民間の追悼行事も約70件実施される。
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「福祉避難所」整備遅れ 兵庫県内14市町 未指定 マニュアル作成5市町どまり
災害時に障害者や介護の必要な高齢者らの優先避難先となる「福祉避難所」や同様の施設が、兵庫県内41市町のうち14市町で全く指定されていないことが、神戸新聞社の調べで分かった。指定している自治体でも、大半が開設基準や職員配置などを細かく定めていない。阪神・淡路大震災では要援護者が避難所で不便を強いられた経緯があり、備えが急がれる。
福祉避難所は地震災害などで長期の避難生活が見込まれる場合、健常者と同じ施設では生活が困難だったり救援物資が十分に行き渡らなかったりする障害者や高齢者、妊婦を対象に開設される。
阪神・淡路大震災では、車いす用のトイレやスロープが完備されていない場所で過ごした要援護者も多くいた。そのため、倒壊しそうな自宅に戻ったり、避難所で孤立したりする人もいた。
この教訓から、国は1996年、要援護者の支援策として福祉避難所の概念を打ち出し、2007年3月の能登半島地震で初めて設置された。08年に作成された厚生労働省のガイドラインは、小学校区に1カ所程度の割合で指定する-としている。
兵庫県内で要援護者の避難先を指定しているのは27市町で、14市町は未整備だった。上町断層帯(大阪府)が震源になった場合、震度7が予測される尼崎市も指定しておらず、担当者は「市民の要望もあり早急に検討したい」とする。しかし、派遣する医者や介護員ら人材の確保が難しく、「簡単にはいかない状況」と打ち明ける。
ただ、避難先を指定していても運営マニュアルまで作成しているのは、5市町だけだった。芦屋市は震度5強の揺れや津波警報が発表された場合に受け入れ体制を整え始め、開設時には職員に加え、保健師を配置。赤穂市は介護員やヘルパーの派遣などを決めていた。
要援護者向けの災害対策は、福祉避難所の指定以外にも課題が山積している。逃げ遅れを防ぐのが先決だが、県災害対策課によると、対象者の名簿を作ったものの、誰がどう助けるかまでの計画は、昨年3月現在で4市しか策定していないのが実態という。(斉藤絵美)
2011/1/17