連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

  • 印刷
「東日本大震災の遺族に、自分の経験を伝えたい」と話す藤本忠雄さん=神戸市中央区中山手通6、神戸山手大学(撮影・神子素慎一) 臨床心理士試験に合格した植松秋さん。「東北で心のケアに携わりたい」=芦屋市松ノ内町(撮影・田中靖浩)
拡大

「東日本大震災の遺族に、自分の経験を伝えたい」と話す藤本忠雄さん=神戸市中央区中山手通6、神戸山手大学(撮影・神子素慎一)

臨床心理士試験に合格した植松秋さん。「東北で心のケアに携わりたい」=芦屋市松ノ内町(撮影・田中靖浩)

  • 「東日本大震災の遺族に、自分の経験を伝えたい」と話す藤本忠雄さん=神戸市中央区中山手通6、神戸山手大学(撮影・神子素慎一)
  • 臨床心理士試験に合格した植松秋さん。「東北で心のケアに携わりたい」=芦屋市松ノ内町(撮影・田中靖浩)

「東日本大震災の遺族に、自分の経験を伝えたい」と話す藤本忠雄さん=神戸市中央区中山手通6、神戸山手大学(撮影・神子素慎一) 臨床心理士試験に合格した植松秋さん。「東北で心のケアに携わりたい」=芦屋市松ノ内町(撮影・田中靖浩)

「東日本大震災の遺族に、自分の経験を伝えたい」と話す藤本忠雄さん=神戸市中央区中山手通6、神戸山手大学(撮影・神子素慎一)

臨床心理士試験に合格した植松秋さん。「東北で心のケアに携わりたい」=芦屋市松ノ内町(撮影・田中靖浩)

  • 「東日本大震災の遺族に、自分の経験を伝えたい」と話す藤本忠雄さん=神戸市中央区中山手通6、神戸山手大学(撮影・神子素慎一)
  • 臨床心理士試験に合格した植松秋さん。「東北で心のケアに携わりたい」=芦屋市松ノ内町(撮影・田中靖浩)

 阪神・淡路大震災で姉を失った30歳の女性が今春、臨床心理士になる。妻を亡くした62歳の男性は今、大学で心理学を学ぶ。2人は「東日本大震災で苦しむ人たちの心に寄り添いたい」と願う。悲しみを抱いて、それでも懸命に生きてきた。あの日から17年。思いは阪神・淡路と東日本の被災地を結ぶ。

臨床心理士試験に合格/「被災者に寄り添う」/姉亡くした植松秋さん 徳島

 昨年12月、徳島県鳴門市の植松秋(みのり)さん(30)は、臨床心理士試験の合格通知を受け取った。10年越しの夢をかなえた。

 阪神・淡路大震災は、中学1年生のとき。芦屋市の自宅が全壊し、隣に寝ていた姉の素(もと)さん=当時(15)=が亡くなった。「私が死ねばよかった」。悲嘆にくれる両親を見て、思った。その一方で「自分がしっかりしないと」と元気を装った。

 心理学を勉強していた大学時代、心と体に異変が起こる。小さな音や揺れにも恐怖し、パニックを起こした。精神的な後遺症「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と診断された。

 治療では、姉との死別体験を何度も語った。拒絶していた体験を少しずつ受け入れ、罪悪感は消えていったという。「生きよう」。そう思えるまで震災から10年以上かかった。優しい表情、落ち着いた口調。「なぜか、人から相談されやすい」と照れる。それなら、とカウンセラーを目指した。

 東日本大震災の後、被災地から転校生を迎えた学校の子どもたちのために、日本心理臨床学会のホームページにメッセージを寄せた。「その人が笑っているとき、無理してないかな? しんどくないかな? と見守って」と書いた。

 研究補佐員として働く鳴門教育大には昨年末、退職の意向を伝えた。心理士の資格で活動できるのは今年4月から。東北で心のケアに携わる仕事を探そうと決めた。

 「目に見えない苦しみを東北の人たちも抱えていると思う。寄り添っていきたい」(岸本達也)

大学で心理学を勉強中/「つらい思いを救う」/妻亡くした藤本忠雄さん 小野

 兵庫県小野市の藤本忠雄さん(62)は、東日本大震災の直後、日本心理臨床学会のホームページに手記を公開した。「大切な人を失った人の力になりたい」。封じ込めてきた思いを、初めて解いた。

 17年前、当時住んでいた芦屋市内の自宅が全壊し、妻昭子さん=当時(47)=が亡くなった。

 葬儀、避難所生活、住宅の確保…。「現実を受け止める間もなく、日々精いっぱい。涙も出なかった」。妻に代わり、中学生だった息子2人のため、朝早く起きて弁当を作り、仕事を終えてから夕飯を用意した。妻との日常はもう戻らない。喪失感に打ちのめされた。

 小野市に引っ越した後、60歳で仕事を辞めた。震災を経験し、人の心に興味を持ち、2年前から神戸山手大学(神戸市中央区)で心理学の基礎やカウンセリングを学ぶ。

 震災の話は避けていたが、東日本大震災が転機となった。「大切な人を失い、つらい思いをしているんじゃないか」。遺族のことが気になった。「体験を寄稿して」という同学会からの依頼を、悩んだ末に引き受けた。

 「生きていることが何より頑張っていることなんです」。そう呼び掛けた手記の反響は大きかった。「救われた」。手記を読んだ宮城県塩釜市の主婦とは、今もメールの交換が続く。

 「遺族の苦しみは、遺族にしか分からないところもある。今学んでいることを役立てたい」

 17日朝は仏壇にお茶を供えて手を合わす。17年間、毎日そうしてきた。そして、きょうも大学へ行く。(上田勇紀)

    ◆

各地で追悼式

 6434人が亡くなり、3人が行方不明のままの阪神・淡路大震災は17日、発生から丸17年となる。兵庫県内各地で開かれる追悼行事には、昨年3月11日に起きた東日本大震災の被災者も多く招かれ、思いを一つにして鎮魂と連帯のメッセージを発信する。

 神戸市中央区の東遊園地では、市民団体と市が「阪神淡路大震災1・17のつどい」を開く。発生時刻の午前5時46分に黙とうし、遺族代表が追悼の言葉を述べる。東北の被災地からも遺族や宮城県名取市長らが参列し、阪神・淡路大震災の被災者と交流する。

 兵庫県などによる「1・17のつどい」は午前11時50分、神戸市中央区の人と防災未来センター前で開かれる。政府からは平野達男・防災担当相が出席する。

 正午には、各地の寺院や教会が鐘をつき、神戸港に停泊中の船舶が汽笛を鳴らす。民間の震災関連行事は17日を挟んで約70件開催されるほか、県内1500以上の学校園が、防災訓練や震災を語り継ぐ行事を予定している。

2012/1/17
 

天気(9月8日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 40%

  • 33℃
  • ---℃
  • 50%

  • 34℃
  • ---℃
  • 20%

  • 34℃
  • ---℃
  • 40%

お知らせ