ガラスケースの奥。くすんだ緑色の写真が蛍光灯に照らされていた。往来は絶えないが、足を止めて眺める人は少ない。
JR新長田駅(神戸市)の南。国道2号をくぐる地下通路「アスタギャラリー」に、阪神・淡路大震災を伝える写真があった。家が崩れ、燃え上がる商店街で住民がなすすべもなく立ち尽くす。どれも遠い昔のことを伝えるような変色ぶりだ。
地元、大正筋商店街振興組合の伊東正和理事長(65)は「みんな日々の暮らし、一歩一歩の積み重ねに精いっぱい」。
周辺は再開発が進められ、整然としたビルが並ぶ。だが、町は高齢化、消費低迷にあえぐ。
「町を何とかしないとね」。写真が訴え、伝える力は大きい。この光景が原点であり、力の源。伊東理事長はもう一度、あの日を胸に刻み、歩みだそうと思う。(宮路博志)
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阪神・淡路大震災から、もうすぐ丸19年となる。歩んできた道を振り返り、未来への継承と風化に揺れる町を見つめた。
2014/1/7