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空き家率が3割を超える高取山町。各地で空き家が増え、防災や防犯面での不安が高まっている=神戸市長田区高取山町1 木造住宅の密集地域に整備された「まちなか防災空地」=神戸市灘区福住通3(撮影・後藤亮平) 築120年の古民家を活用した喫茶店。子どもたちが火災などで使う緊急用蛇口の表示板作りに取り組んでいた=神戸市長田区駒ケ林町1(撮影・風斗雅博)
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空き家率が3割を超える高取山町。各地で空き家が増え、防災や防犯面での不安が高まっている=神戸市長田区高取山町1

木造住宅の密集地域に整備された「まちなか防災空地」=神戸市灘区福住通3(撮影・後藤亮平)

築120年の古民家を活用した喫茶店。子どもたちが火災などで使う緊急用蛇口の表示板作りに取り組んでいた=神戸市長田区駒ケ林町1(撮影・風斗雅博)

  • 空き家率が3割を超える高取山町。各地で空き家が増え、防災や防犯面での不安が高まっている=神戸市長田区高取山町1
  • 木造住宅の密集地域に整備された「まちなか防災空地」=神戸市灘区福住通3(撮影・後藤亮平)
  • 築120年の古民家を活用した喫茶店。子どもたちが火災などで使う緊急用蛇口の表示板作りに取り組んでいた=神戸市長田区駒ケ林町1(撮影・風斗雅博)

空き家率が3割を超える高取山町。各地で空き家が増え、防災や防犯面での不安が高まっている=神戸市長田区高取山町1 木造住宅の密集地域に整備された「まちなか防災空地」=神戸市灘区福住通3(撮影・後藤亮平) 築120年の古民家を活用した喫茶店。子どもたちが火災などで使う緊急用蛇口の表示板作りに取り組んでいた=神戸市長田区駒ケ林町1(撮影・風斗雅博)

空き家率が3割を超える高取山町。各地で空き家が増え、防災や防犯面での不安が高まっている=神戸市長田区高取山町1

木造住宅の密集地域に整備された「まちなか防災空地」=神戸市灘区福住通3(撮影・後藤亮平)

築120年の古民家を活用した喫茶店。子どもたちが火災などで使う緊急用蛇口の表示板作りに取り組んでいた=神戸市長田区駒ケ林町1(撮影・風斗雅博)

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  • 木造住宅の密集地域に整備された「まちなか防災空地」=神戸市灘区福住通3(撮影・後藤亮平)
  • 築120年の古民家を活用した喫茶店。子どもたちが火災などで使う緊急用蛇口の表示板作りに取り組んでいた=神戸市長田区駒ケ林町1(撮影・風斗雅博)

 屋根が陥没した文化住宅。破損して落下しかけた状態の窓の格子や雨どい。雑木に完全に覆われた空き家。地区内に入り組んだコンクリートの階段は一部で崩れ、手すりも朽ちている。

 六甲山系の西側、高取山(328メートル)の山すそに広がる神戸市長田区高取山町1丁目。1960年代、都市部の拡大とともに、がけをコンクリートで固めた土台の上に一戸建て住宅や文化住宅が次々と建設された。

 地区で育った子どもの大半は別の場所に居を構えて戻らず、残った高齢者はやがて子に引き取られ、施設に入居、あるいは亡くなった。2丁目を含む同町の一昨年8月時点の空き家率は32%に上る。

 一帯は土砂災害警戒区域にあり、密集した建物やコンクリート壁が崩壊すれば、周囲も被害に巻き込まれる。自治会長の小峠(ことうげ)勇さん(78)は「所有者の承諾なしに、手は付けられない」と憂える。

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 空き家の解体はなぜ進まないのか。同町などの五位の池小学校区防災福祉コミュニティ本部長、古家昭二さん(73)は「お金の問題が大きい」と話す。

 一昨年夏、阪神・淡路大震災で全壊したままの空き家に小学生が立ち入るようになり、大阪に暮らす所有者に解体を求めた。だが対応を渋られ、やがて連絡が取れなくなった。

 所有者にとっては、建物の解体費に加え、更地になると固定資産税の軽減特例が外れ、毎年の税額が3~4倍に膨れ上がる。古家さんは「売れる土地でもなければ、負担が増えるだけ。解体が進むはずがない」と嘆く。

 昨年5月、地域防災や景観保全へ、空き家対策特措法が施行された。倒壊などの恐れがある「特定空家等」の所有者に市町村長が除却、修繕などを指導し、改善が見られない場合は勧告によって税額を引き上げられる。

 神戸市は2016年度から、特定空家等の指定や指導、勧告に乗り出す構えだ。担当者は「最終的には行政代執行による解体も可能だが、自主的な対応を期待したい」とする。

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 一方、建築士の間では「特定空家等に指定されないための空き家修繕方法」の検討が始まっているという。指定を逃れれば、低い税額のまま、空き家の処分を先延ばしできる。

 空き家をめぐる地域と所有者の“攻防戦”。建築コンサルタントの松原永季(えいき)さん(50)は、空き家が「お荷物」としてのみ語られる風潮に違和感を抱く。

 「空き家は地域の共助を再生する器」。そう提唱する松原さんが空き家活用の仕掛けづくりを進める神戸市長田区・駒ケ林地区を訪ねた。

【負の遺産、交流の場に活用  安全な地域へ模索続く】

 木造家屋が密集し、2メートルに満たない路地が縦横に走る神戸市長田区駒ケ林町。1950年代に1万人いた人口は3千人を割り、空き家率は16%に上る。

 建築コンサルタントの松原永季(えいき)さん(50)が築120年の空き家を買い取って事務所にしたのは、7年前だ。その後、下町情緒を残すまちづくりに取り組む中で、一部を地域の人たちが集える喫茶店に改装した。

 地域の中で仕事をしていると、空き家の処分についての相談が寄せられ、アトリエなどに再生させた。事例を重ね、空き家の活用でまず問われたのが、「貸し手と借り手の信頼関係」だった。

 昨年3月、「空き家・空き地再生支縁ネットワーク」を始動させた。空き家の所有者と利用希望者が定期的に交流し、縁を育む。今後、空き家を持て余し、活用に踏み出せずにいる所有者の啓発にも取り組む。

 「人口が減って高齢化が進み、地域の中の濃密な支え合いが薄れている。その構造を変えていくためには、外部の力を加える必要がある」と松原さん。「空き家は外から人と活力を受け入れる器だ」と持論を語る。

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 空き家を媒介に地域に活力を取り込む試みの一方で、地域と行政、所有者が協定を結んで空き家を「まちなか防災空地(くうち)」として地域の安全性向上につなげる取り組みが、神戸市内で進んでいる。

 2013年11月、神戸市灘区の摩耶地区まちづくり協議会(まち協)の会合で、地区内にある2階建ての文化住宅が議題になった。築55年。壁は落ち、土台は崩れかけ、見るからに危険だった。

 交渉を重ねた末、建物を解体して「防災空地」とする協定が昨年末、まち協、市、所有者の3者で結ばれた。市は非課税とする代わりに土地の無償使用の貸借契約を結び、まち協が管理する。

 この文化住宅は3月までには解体され、同地区の4カ所目の防災空地として、災害時には住民の逃げ場となるほか、青空囲碁や盆踊り、茶話会といった催しの企画も挙がる。

 防災空地整備事業では、建物の解体費も全額補助される。所有者の協力が得やすい半面、財政負担の限度もあって、対象は同地区を含む灘北西部のほか、兵庫北部、長田南部、東垂水に限られる。

 摩耶地区まち協事務局長の小野三恵(みえ)さん(64)は「防災面で結果を出していくことで、地域の人々に頼られるまち協にしたい。その先に、安全になった地域があればいい」と話す。

(森本尚樹)

2016/1/16
 

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