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震災復興土地区画整理事業の対象となった鷹取商店街。街並みは整ったが、人出は戻っていない=神戸市長田区(撮影・小林良多) 神戸新聞NEXT
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震災復興土地区画整理事業の対象となった鷹取商店街。街並みは整ったが、人出は戻っていない=神戸市長田区(撮影・小林良多)

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 午前8時。神戸・長田の精肉店「マルヤス食品」の店主吉田安夫(67)は、店の作業場に立つ。

 包丁を磨き、黙々と肉をさばく。ロース、牛すじ…。余分な脂を取りパックに詰める。35年間続ける日常。「休むと、逆に体の具合が悪くなる」

 阪神・淡路大震災で全37店が焼失した菅原市場。消火栓から水が出ず、燃える市場を眺めるしかなかった。働き盛りの45歳。長男はまだ小学生だった。「借金してでも頑張ろう」

 中小企業高度化資金で約3億円を借り、2000年、他の店主4人と共同スーパー「味彩館(あじさいかん)Sugahara」を建て再出発した。最初の5年間は「絶好調」だった。

 市場のあった御菅東地区は、03年に復興土地区画整理事業が完了。道幅は広がり、一戸建て住宅が並んだ。商いのまちは大きく風情を変えた。近隣に大手スーパーが進出し、売り上げが先細りした。高齢化した同志は鬼籍に入り、後継ぎもおらず去って行った。

 味彩館は昨年閉店。店舗建物でただ一人営業を続けながら、新たな出店業者を探している。高度化資金は1億円以上残り、期限延長して年間の返済額を減らしてもらった。「きちんと返すため、できる限りを尽くしたい」。重責がのしかかる。

   ◇   ◇

 災害に強いまちを目指し、神戸市は市内11地区に区画整理の網を掛けた。長田区では街並みが整った半面、避難した住民は戻り切らなかった。

 同区でやはり火災に見舞われた鷹取商店街。01年にいち早く区画整理が完了した。その3年前に店を再建した飲食店の男性店主(46)は「当初は工事関係者でにぎわった。その後は思ったより、人が来てくれなくなった」と嘆く。売り上げは目標の半分。高度化資金は数千万円の返済が残る。場所を変えれば風向きが変わる、とも思うが「投資なんてとても…」。

 震災前に80以上あった店は今、21店。中心部の銭湯は再建時に“復興のシンボル”と注目されたが、4年後の02年に廃業した。再々起は果たせず、兵庫県は昨年、高度化資金の債権2億5千万円の放棄を決めた。

   ◇   ◇

 民間金融機関の融資利率が最低でも2%台だった時代。震災特例で無利子となった高度化資金は魅力的だった。

 「民間から借りられず、高度化しか手段のない経営者も多くいた」と、制度に長く携わった元県職員の経営コンサルタント藤井玉夫(65)は振り返る。

 阪神・淡路から16年後の東日本大震災では、中小企業の復興にグループ補助金が新設された。企業グループに事業費の4分の3を助成、従来は私有財産で自己負担が原則とされた設備にも適用した。結果、高度化資金の貸し付けは限られた。

 藤井は指摘する。「22年前は復興名目の政策融資の性格が強かった。今、経営者は返済で身動きが取れない。公平性はあるが、地域経済の活性化の点から制度運用を再考する時期に来ているのではないか」=敬称略=

   ◆   ◆

 阪神・淡路大震災で店や工場を失った中小商工業者は、中小企業高度化資金を受けて再起を誓った。震災22年をへた今、その返済期限が迫る。デフレ不況、急激な産業構造の変化…。一筋の光を見いだした経営者らは、思い描いた未来図とは違う風景の中で、もがき続けている。(横田良平)

2017/1/17
 

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