阪神・淡路と東日本。大震災に見舞われた中小企業の資金支援は、貸し付けがメインだった阪神・淡路に対し、東日本では補助金が新設され大きく異なった。今後、南海トラフ巨大地震などの大災害が想定される中、中小企業の資金調達の支援制度はどうあるべきか。阪神・淡路の経済的影響を研究する地主敏樹・神戸大学大学院経済学研究科教授に聞いた。(横田良平)
-阪神・淡路から22年。今も、多くの中小企業が、高度化資金の返済で困っている。
「東日本でグループ補助金が使われた実績をみると、返済額の減免などが必要だろう。現状では、あまりにも不公平。個人向けの災害援護資金は、2015年に返済免除の要件が拡大された。高度化資金でも、頑張ってきた事業者への措置を考えないといけない」
-この20年、経済の停滞が続いた。
「阪神・淡路の直前はまだ景気が上向くとの予測があった。その後、金融危機やリーマン・ショックが起こり、金利減免や返済の繰り延べを促す中小企業金融円滑化法ができた。大きな流れの中で、中小企業の救済には、返さなければならないお金ではなく、資本につながるお金を注入しないと立ち直れない、という考え方ができた」
-東日本のグループ補助金への評価は。
「内容が圧巻だった。再建事業費の8割方が補助で賄われ、残りは日本政策金融公庫が低利融資した。阪神・淡路にこの制度があれば、多くの企業が救われた」
「しかし、厳密な審査がなく、無駄が多い。南海トラフなどより広範囲、多数の事業者が対象になる場合は財政上の限界で到底使えない手法だ」
-次の大規模災害に向けた備えは。
「支援の本筋は二重ローン対策だ。東日本では被災企業への対策として、金融機関が持つ既存の貸付債権を買い取り、債務を一部免除する支援機構が設立された。既存の負担を軽くし、かつ公的資金を注入して返済額が過大にならないようにするのが大事だ。さらに保険の加入促進も必要。補助と貸し付けのバランスを保ち、迅速に事業を再興できる制度設計を急ぐべきだ」=おわり=
【じぬし・としき】1959年、西宮市生まれ。神戸大経済学部卒、米ハーバード大学大学院修了。神戸大講師、助教授を経て2000年から現職。専門は米国の金融政策。阪神・淡路大震災の復興過程の研究を続け、県の「復興フォローアップ委員会」委員も務めた。
2017/1/20