人々が寝静まる未明に発生した阪神・淡路大震災では、8割以上の人が自宅の下敷きになって亡くなった。住宅の耐震化こそが巨大地震から命を守るための対策の根本であることを私たちは学んだ。だが、耐震改修が不可欠な古い住宅の耐震化率は全国平均で3・9%、兵庫県は5・8%(いずれも2008年時点)にとどまっており、補助重視の国や自治体の施策は限界に来ている。
住宅は私有財産であると同時に、高い公共性を持っている。これは阪神・淡路から20年の議論の中で定着してきた思想だ。
多数の家が倒壊すれば、避難路をふさぎ、緊急車両の到着を阻む上、大火の原因にもなる。倒壊家屋の撤去は莫大(ばくだい)な公金の支出につながる。
家屋の倒壊を最小限にとどめることが、災害からの迅速な復旧・復興につながる。それが阪神・淡路の大きな教訓である。
耐震改修を義務化する法律を制定し、自ら手掛けることが難しい人には公的支援を惜しまない。「自助」と「公助」を効果的に組み合わせた新たな仕組みを創(つく)ろう。