阪神・淡路大震災から20年の過程で明らかになったのは、復興の主役は被災者であり、その地域に暮らす人々であるということだった。
復興の姿は国や自治体が示すのではなく、被災者自らがつくり上げていくものだ。その過程での議論や葛藤、支援者とのつながりが住民やまちの血肉となり、次の災害に向けて市民主体の防災を進めていくサイクルにもなる。
阪神・淡路の被災者は行政主導の復興の仕組みやまちづくりに異を唱え、対案を示し、議論を重ねてきた。一人一人の声がうねりとなり、被災世帯に現金を給付する「被災者生活再建支援法」が成立し、その後の災害の復興に寄与している。
震災後の1年間で延べ138万人に上ったボランティアや多様な分野に広がったNPOの活動も復興を支えてきた。被災者に寄り添う市民の力がなければ、20年の歩みはもっと暗いものだった。
東日本大震災と福島原発事故の被災者、避難者の苦悩は、阪神・淡路からの芽生えがまだ育っていないことを浮き彫りにしている。
私たちは「市民主体の復興」の理念を根付かせ、広めていかねばならない。市民が主役となる復興を、確固たる仕組みとして構築していかねばならない。