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キハ40形に乗車する東北出身の運転士多田直紀さん。憧れの車両の運転に気を引き締める=北条鉄道北条町駅
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キハ40形に乗車する東北出身の運転士多田直紀さん。憧れの車両の運転に気を引き締める=北条鉄道北条町駅
キハ40形の運転席=北条鉄道北条町駅
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キハ40形の運転席=北条鉄道北条町駅

 運転席に座っていると、幼い子どもたちが手を振ってくれる。乗降客の「ありがとう」の言葉に元気をもらう。憧れの運転士になれたと実感する瞬間だ。

 多田直紀さん(24)は、SL列車が走る岩手県遠野市の生まれ。幼い頃から鉄道が身近にあった。

 八戸工業高等専門学校(青森県)に進学し、寮のルームメートの影響で鉄道研究会に入部した。白地に赤い線の同系統のキハが走るJR八戸線に乗って、鉄道写真を撮りに行っていた。河原で夕日に染まる列車を狙ったり、撮影帰り、頭に雪を乗せたまま近くのラーメン屋で暖を取ったりした。キハの車内にクーラーはなく扇風機のみ。真夏は窓を全開して暑さをしのいだ。

 高専を卒業後、在学中に学んだ土木や建築の知識を生かして、大手鉄道会社で線路を保守、管理する「保線区」の技術職に就いた。2年間、線路を10キロ以上歩いて、枕木が割れていないか、レールのボルトが緩んでいないか点検した。線路を歩いていて、ふと車両の運転席を見上げたとき「やっぱり、あっちがいい」。運転士を目指そうと決めた。

     ◇

 山深い地域の出身。人混みが苦手だった。ローカル鉄道で就職先を探した。兵庫県加西市に降り立ち「商業施設も緑もあって、ちょうどいい」と感じた。2020年5月、北条鉄道に入社した。

 翌年の21年12月12日、秋田-青森間を走っていたキハ40形が同鉄道に搬入された。東北で乗っていたのと同じ型の気動車に、運転士として再会した。座席、運転席を見渡し「車内の雰囲気が八戸線と同じ」。高専時代がよみがえった。

 今年3月からキハ40形の運行が始まり、「世の中に、こんなに鉄道ファンがいたのか」と驚くほど乗客が増えた。運転席からは、田んぼのあぜに寝そべったり、車の上に立ったりしてカメラを構える鉄道ファンが見える。

 高専生だった16年2月、津軽半島の青函トンネル入り口で、北海道新幹線開業に伴い廃止される特急の写真を、寒さに凍えながら撮った。「無くなるなら記録を残したい。その場にいたい」と思った。

 北条鉄道を訪れる人にもいろんな理由がある。以前に乗っていたキハが懐かしい人、豪雪地帯を走っていた寒冷地仕様を見たい人、昭和の時代を感じたい人。「一人一人の思いを受け止めて、適当なことはできない」。運転席の向こう側から、憧れのまなざしで見ていた自分に「夢をかなえた」と言えるように。(敏蔭潤子)

【連載一覧】


<1>再出発、想像以上の人気 乗客増、愛好家が人垣
<2>車両を呼んだ男 希少価値に利点見いだす

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