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【5年前の教訓、自公着々 野党、調整で不協和音も】

 「解散当日」特有の高揚感漂う衆院本会議場。2年足らずの任期を万歳で締めくくった後、足早に退出した自民党の関芳弘(49)=兵庫3区=の表情には笑みが浮かんでいた。

 経済産業政務官を務める関。17日に内閣府が発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は予想を下回るマイナス成長だったが、「間もなくまとまる10月分の経済指標はいい数字が並ぶはず」との見立てを披露し、「そうなれば選挙戦の追い風になる」と解散を断行した首相、安倍晋三の戦略を解説してみせた。

 自民、公明両党には苦い思い出がある。

 わずか1年弱と短命に終わった第1次安倍政権、福田政権の後を受け、2008年9月に誕生した麻生政権。支持率が高いうちに総選挙を-という青写真は、リーマン・ショックに端を発した世界金融危機で崩れた。

 経済対策で解散の時機を見失ううち、前2代の「政権投げ出し」批判も背負い、支持率は下落の一途をたどった。日を追うごとに高まる政権交代の機運。任期満了を1カ月半後に控えた09年7月、逆風が吹き荒れる中で解散に追い込まれた。

 「あの時は逆風どころか台風だった」。関と同様に09年にいったん議席を失った自民前職の渡海紀三朗(66)=兵庫10区=は振り返る。結局、自公で全てを押さえていた兵庫県内12小選挙区のうち11議席を失い、政権の座からも滑り落ちた。

 今回、任期はまだ半ば。700億円かかるとされる総選挙の実施は、野党に「税金の無駄遣い」という攻撃材料を与えることにもなる。それでも、「消費税再引き上げに絡んで『景気条項』を撤廃した。解散する十分な大義がある」と渡海らに不満の色はない。

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 この日夕刻の記者会見で、手ぶりも交えて解散理由を力説した安倍。民主が大敗した2年前も議席を死守した前職松本剛明(55)=兵庫11区=は「結局は政権のご都合解散だ」と切り捨てた。

 松本は19日、党幹部らとともに代表の海江田万里の元を訪れ、野党勢力結集を強く訴えた。2年前から党勢は回復しておらず、このままでは安倍の思惑通りになるという危機感から動いた。

 ただ、突然の解散で時間は限られている。党本部主導で進む維新との選挙区調整をめぐり、地元が支援体制を整えつつあった元職の公認見送り方針が21日に明らかになるなど、不協和音が生じかねない事態も生じている。

 本会議出席のため午前中に上京し、解散後すぐに地元・姫路に戻った松本。「楽な戦いにはならない」の言葉に実感がこもった。=敬称略=

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 突風にあおられるように、衆院が解散された。自民、公明両党が政権を奪還して2年。「師走決戦」を前にした兵庫の動きを追う。(総選挙取材班)

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