12月2日に公示される衆院選は、経済政策「アベノミクス」が争点の一つに挙がる。約2年間の安倍政権のかじ取りをどう評価し、選挙戦に何を望むか。地域活性化の方策は-。兵庫県内の経営者や研究者に聞いた。
-7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が2四半期連続でマイナスとなり、「ショック」が広がった。
「短期的な経済指標に一喜一憂している場合ではない。人口減少を見据え、手を打つべき課題は明らか。財政再建、超高齢化に備えた社会保障の見直し、中国との関係改善などの外交問題。先送りされてきた重要課題に取り組むことが成長戦略の土台になる」
-安倍政権が打ち出した規制緩和中心の成長戦略をどう見る。
「昭和の発想から転換できていない。大企業がもうかれば中小企業にも波及し、家計が潤って消費が増える-との図式は通用しないのに、依然として大企業優遇のままだ」
「東京一極集中が変わらないのも、東京が良くなればやがて地方もという昭和的な考えが根強いから。昭和は世界的にも経済成長が続いた特殊な時代。日本の成長は実力以上だったかもしれない。あんな時代はもう来ない」
-「脱・昭和」には何が必要か。
「地方自治の拡大が求められる。地域を支える中小企業や地場産業の振興は、各地の実情に応じて取り組むべきだ。関西は全国に先駆けて府県域を超えた広域連合を発足させるなど地方分権の意識が高い。大きな可能性を秘めている」
「働く人の確保策も重要だ。女性や高齢者が働きやすい環境づくりを急がないと、いずれ訪れる急激な労働人口減に対処できなくなる。国や地方の女性政治家を増やし、制度を作る側に女性が参画することが一つの鍵になる」
-成長や拡大を目指すこと自体に無理があるとの声も多い。
「どれほど豊かになっても競争を強いるのが資本主義。グローバル競争は避けられそうにないが、政治の力で激変緩和は可能だ。自由を規制し、いい意味での社会主義を回復させる必要性が出てくるだろう。正義にかなう公正な競争とは何か。次世代への責任をどう果たすべきか。そうした議論が深まることを期待したい」
(聞き手・小林由佳)
〈ほんごう・りょう〉1972年大阪市生まれ。関西学院大大学院経済学研究科修了。弘前学院大講師、関学大准教授を経て2013年から現職。専門は近代経済学史。西宮市在住。