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 「英国で最もエキサイティングなベンチャー組織が政府系って、どういうこと?」

 9月23日、神戸市北区で開かれたIT関連イベント。神戸市ICT(情報通信技術)業務改革専門官、砂川洋輝(ひろき)(33)が全国の自治体職員ら約50人に向け、英国政府デジタルサービス(GDS)に言及した。

 GDSは英国政府のインターネットサイトの運用などを担うデジタルサービス改革チームだ。モノやサービスの開発で使い手を最優先に考え、さまざまな人の意見で練り上げる「デザイン思考」を取り入れ、民間の技術による住民参加の公共サービスを次々と展開する。砂川は「デザイン思考の成功例」と解説した。

 その考え方を北欧で学び、7月から神戸市の業務改革に取り組む砂川は「多くの職員が改革に加わり、主体的に考えて成果をつくるのが大事。デザイン思考を組織に根付かせるのが私の使命」と力を込める。

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 神戸市長久元喜造(63)は就任以来、外部の専門人材を積極的に登用し、その手法や考え方を組織に取り込む。実務レベルにも及ぶが、草の根の変革を組織全体に広げるには時間がかかる。

 その点、手っ取り早く「民」を取り込む手法が「民間出身副市長」だ。2009年、豊岡市長中貝宗治(62)は兵庫県内で初めて、副市長を公募した。1371人から選ばれたのが、元京セラ子会社社長の真野毅(61)だった。

 公民連携した城崎温泉への外国人客誘致や東京アンテナショップ開設などに貢献し、今年9月に退任した真野は「一人で旗を振っても駄目。役所の文化を理解し、職員と一緒に取り組んで初めて民間の力が発揮できる」と振り返る。

 鳴り物入りで就任した民間副市長が結果を残せないまま人知れず去るケースも多い。真野は「使命、狙いを明確化せずに採用しても、『雇った』『意見を聞いた』のジェスチャーで終わる」と批判する。

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 人口減少時代の行政が模索するのは、民間との連携による「新しい公共」だ。砂川は行政組織の草の根からその醸成を担い、真野は統括役として指揮を執った。砂川は「公と民が補完し合うべき」と訴え、真野は「行政には、ビジネスを理解できるリーダーが不可欠」と断言する。

 官僚や市職員など行政出身の市長が5代68年続く神戸市。官僚出身ながら、民間人材を取り込んで公民連携の地ならしを始めた久元に対し、元客室乗務員の光田あまね(40)と元建設会社員の中川暢三(61)は「民間」を強調し、自ら市長になって行政に風を吹き込むと息巻く。

 一方、共産党県委員長の松田隆彦(58)は「行政を市民の手に」と訴える。「民」をいかに行政に組み込み、新しい公共をつくり上げられるか。トップの手腕と資質が問われる神戸市長選が8日、告示される。

=敬称略=(森本尚樹)

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