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手延べそうめんのコシの秘密をスプリング8で分析した県立大大学院環境人間学研究科の中谷茉友さん=姫路市新在家本町1
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手延べそうめんのコシの秘密をスプリング8で分析した県立大大学院環境人間学研究科の中谷茉友さん=姫路市新在家本町1
スプリング8のマイクロCTで撮影した手延べそうめん(左)と機械そうめんの断面。手延べには細長いすき間がある(中谷さん提供)
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スプリング8のマイクロCTで撮影した手延べそうめん(左)と機械そうめんの断面。手延べには細長いすき間がある(中谷さん提供)
揖保乃糸の「小引き工程」の手作業(県手延素麺協同組合提供)
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揖保乃糸の「小引き工程」の手作業(県手延素麺協同組合提供)
揖保乃糸の「小引き工程」の機械作業(県手延素麺協同組合提供)
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揖保乃糸の「小引き工程」の機械作業(県手延素麺協同組合提供)

 播州名産の手延べそうめんを代表するブランドが「揖保乃糸」。細く長いめんには伝統技術の粋が詰まっている。そのめんを、ハイテク技術が詰まった大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県佐用町光都1)で分析するというユニークな研究が行われたと聞きつけ、兵庫県立大大学院環境人間学研究科(同県姫路市新在家本町1)を訪ねた。(直江 純)

 スプリング8は、加速された高エネルギー電子ビームから発生する「放射光」を利用する施設。1992年に供用を開始し、98年に起きた和歌山毒物カレー事件で、ヒ素の不純物を鑑定したことで有名になった。

 研究は、同研究科と県手延素麺協同組合(兵庫県たつの市)の産学連携の一環。本年度は、食品物性研究室の中谷茉友さん(24)が修士論文のテーマとした。

 論文の題は「調製条件の異なる麺の物性と構造観察」。記者はまず「論文発表要旨」を入手したが、複雑な記号と専門用語が羅列してあって、さっぱり理解できない。中谷さんに「できるだけかみ砕いて、柔らかく解説をお願いします。読者と私が消化できるように。そうめんだけに!」と取材を申し込んだ。

 中谷さんは突然の申し出にメン食らいつつ、取材当日はスライドを準備して迎えてくれた。「簡単に言うと、いろいろなそうめんのコシの違いを、スプリング8で調べたんです」

 なぜスプリング8を使う必要があったのか。他の研究者によるこれまでの論文では、手延べの製法が似ている秋田県の「稲庭うどん」を調べたものはあった。

 しかし、そうめんは直径が1ミリ前後。細さが売りの揖保乃糸は普及品の「上級(赤帯)」でも0・70~90ミリ。最高級品「三神」だと0・55~60ミリと極めて細い。「表面は電子顕微鏡で調べられても、内部構造は見ることができなかった。謎が多かったんです」

 研究結果を聞く前に、そもそも「手延べ」とは何なのかを知る必要がある。うどんやそばの「手打ち」とは違うのか。「生めん類の公正競争規約」などによると、「手打ち」は生地をこねるところから刃物で切るところまで全てが手作業のもの-と定められている。

 ただし、こねる作業だけは機械を使うことが許されている。製めんのメカニズムが同じでも、他の作業に機械を使うと「手打ち式」「手打ち風」と呼ばれる。

 次は「手延べ」の定義だ。生地をめんにする際、「手打ち」は包丁など刃物で切るが、「手延べ」は生地をひねりながら長くする。

 そして、徐々に引き延ばしていく「小引き」工程が「手延べ」の本質だ。乾燥させる「門干し」工程と合わせ、少なくともどちらかを手作業で行うと「手延べ」を名乗ることができる。

 中谷さんが比較対象とした「機械そうめん」の製法は「手打ち風うどん」に似ている。生地をこねてコシを出すのは手延べと同じだが、延ばして糸状に細くするのではなく、刃物で切って細くするからだ。

 それでは、いよいよ分析結果を見ていこう。手延べには小麦粉と塩水だけでできた生地をこねる作業の「混捏(こんねつ)」に加え、糸のようにより合わせる「複合」という工程がある。

 揖保乃糸の混捏時間は通常20分間、複合回数は24回。実験では、混捏を30分間に延長して、複合回数を12回や36回に増減したサンプルを組合側が提供した。同じメーカーの機械めんも含め、5種類で比較した。

 組合側には「混捏が長い方、複合回数も多い方が食感が良くなるのでは」との予測があった。しかし、同じ水分量になるようにゆでためんに「どれだけ力を加えればかみ切れるか」という実験では、回数や時間に単純には比例せず、通常通りの製法のバランスが良いことが裏付けられた。

 そして、大きな差が出たのが手延べと機械めんの比較だ。最後にかみ切る時の圧力はほぼ同じ力だが、切れるまでの食感は手延べの方がメリハリが利いている。

 「一般に手延べの方が、コシがあると言われますが、データにも表れていますね」と中谷さん。かみ切る寸前まで弾力を保ち、「プツン」と心地よく切れるのが手延べの特長という。

 では、なぜこの違いが生まれるのか。中谷さんは、スプリング8の「マイクロCT」で撮影した。病院にあるコンピューター断層撮影装置(CT)の高性能版だ。丸太のように輪切りにした断面では手延べと機械の違いが少ないが、垂直に切った断面では、機械は点状のすき間しかないのに対して、手延べはめんの方向に細長いすき間ができていることが分かった。

 すき間の長さは0・1ミリ単位。長さだけでなく、すき間の断面積もAI(人工知能)を使って解析すると、手延べの方が大きいことが分かった。手延べ同士で比べても、すき間の大きいめんの方が切れにくく、コシのあることが分かった。

 中谷さんがそうめんを研究したのは、長期保存しやすく食品ロスが少ない点に着目したからという。「和歌山の実家でよく食べたそうめんは『やっぱり揖保乃糸』でしたよ」と記者相手の「講義」を締めくくった。

西播
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