イッツ ア ワンダフル ジャーニー

「すくいすぎたっ!」(撮影・宮路博志)
子どもの頃、そうめんが嫌いでした。夏休みの昼食は週に5日はそうめんだったと思います。もっさりというか、ネバネバというか、麺類なのにしっかり噛(か)んで飲み込まなければならないものを、どうして日本人は夏に好んで食べているのだろう、と子ども心に疑問を抱いていたものです。わが家で購入していたそうめんのパッケージには「高級」と書いてあったので、どこの家庭でもこういったそうめんを食べていると信じていたのです。
それでもまだ、おいしい付け出汁(だし)に浸しながら食べられる日はマシでした。わが家では刻んだ干しシイタケとタマネギの入った甘口の薄い出汁をかけて食べるのが常でした。祖父母がこちらでなければ口にせず、かといって子どもだけ別の付け出汁を用意してもらうと贅沢(ぜいたく)だと言われるので、仕方なく、どこがおいしいのかさっぱり分からないそうめんを、大人になったらこんなもの絶対に食べない、と胸に誓いながら、無理やり口に押し込んでいました。
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