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休日を家族で楽しむ子どもたち=神戸市垂水区名谷町、垂水健康公園(撮影・峰大二郎)
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休日を家族で楽しむ子どもたち=神戸市垂水区名谷町、垂水健康公園(撮影・峰大二郎)

休日を家族で楽しむ子どもたち=神戸市垂水区名谷町、垂水健康公園(撮影・峰大二郎)

休日を家族で楽しむ子どもたち=神戸市垂水区名谷町、垂水健康公園(撮影・峰大二郎)

 地域が揺らいでいる。

 人の数が減る。経済がうまく回らない。近所付き合いが薄れてゆく…。確かにそうだが、半ば画一的に語られる「将来の不安」が、今の姿を見る目を曇らせていないか。

 この地に暮らし続けるためには何が必要だろう。そのヒントを見つけるため、神戸新聞報道部・特報班は、県内の現場に密着するシリーズ「兵庫で、生きる」を始めます。まずはプロローグとして、データから兵庫の“現在位置”を探る。

 「全国で45位?!」

 あるショッキングなデータ本がある。

 法政大学の坂本光司教授(地域経済学)らが4年前に出版した「日本でいちばん幸せな県民」。全国47都道府県別の「幸福度」を40の指標で調べ、ランク付けした。兵庫県は下から3番目に位置する。

 「そんなはずは…」。特報班4人は全員、首をかしげた。県内で取材をしてきた実感として、にわかに受け入れがたい。

 「そういう声は他県からもたくさん聞きました」。坂本教授は苦笑した。「兵庫は、待機児童の数や家計における借金額などが響いています」

 「幸福度」という考え方は、ブータンが40年以上前、国民総生産(GNP)などに対して提唱した「国民総幸福度(GNH)」にさかのぼる。

 日本でも大学や自治体、研究機関による多くの「幸福度」が存在する。指標=物差しによって順位もさまざま。大阪大などの調査(08年公表)では打って変わって兵庫が首位に輝いている。

 東洋経済新報社は全国791市(東京区部含む)を対象に「住みよさランキング」を毎年出す。最新版では、芦屋市(26位)、加東市(43位)の2市が県内からトップ50に入った。

 1993年から続いているが、「保育所定員数」が加わったり「銀行の支店数」が消えたり。時代によって指標は異なる。

 編集担当の加藤千明さん(46)は分析する。「人々が住む場所に求める条件は刻々と変わる。うまく沿うことができる街が選ばれる」

     ‡ 

 下から3番目はもう一つある。

 県外に出て行く人が、入って来る人を上回る「転出超過」が2014年、兵庫県は7092人。北海道、静岡県に次ぐワースト3位だった。15年の人口減少数も兵庫は3番目に多い。

 目立つのは大阪への流出。兵庫と大阪の出入りは長らく兵庫への「入り」が多かったが、11年から大阪への「出」ばかりが目立つ。

 「大阪の人を神戸に呼び戻す努力が必要では」

 昨年、神戸市が開いた有識者会議で出た意見に、久元喜造市長は応じた。

 「神戸が居住都市として選ばれにくくなっていることを、正面から受け止めなければならない」

 転出超過が兵庫と僅差の7240人だった静岡。太平洋沿いに新幹線と高速道路が走り、「インフラエリート」と呼ばれ製造業の拠点として人気を誇っていた。しかし近年、支店や工場の閉鎖が相次ぐ。

 「東京は人を吸い寄せて離さない、あり地獄だ」。川勝平太知事は事あるごとに危機感を発信する。

 人口減少は全国どこでも生じ、もはや避けられない。しかし、人の“偏り”は、「どこに住むか」という主体的選択の結果ではないか。だとすれば方策を考える必要がある。

    ‡ ‡

 兵庫県民は幸せか-。出だしから厳しいデータに直面した。だが、これは一面的な姿。もっと多くの物差しで兵庫の力を測りたい。

 「県庁に“データのプロ”のような人がいます」と特報班記者。その人物に話を聞くことにした。

2015/7/9
 

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