あなたは今、幸せですか?
1月下旬から2月上旬、神戸新聞報道部・特報班がインターネット上で投げ掛けたこの質問に、兵庫県在住の1087人から答えが返ってきた。
10段階評価で、最高は10点。最も多い約3割の人が選んだのは「8点」だった。
「兵庫はやっぱり高いですね」
納得したような表情でうなずいたのが、甲南大特任教授の筒井義郎さん(66)=行動経済学。同様の調査では5、6点台を選ぶ人が多いという。「われわれが調べた結果も同じでした」
「同じ」とは、筒井さんが大阪大教授だった10年前の調査。兵庫県民の幸福度が47都道府県の中で最も高かった。
経済不況、貧困、人口減少。不安ばかりが募る言葉が飛び交う、この時代をどう生き抜くか。手がかりを探そう。
昨夏、特報班はそんな目標を掲げてシリーズ「兵庫で、生きる」を始め、県内各地の暮らしに密着してきた。
シリーズの最後に、ある一つの「答え」にたどりつけないか、と考えた。
兵庫の地で得られる「幸せ」とは何だろう。
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経済学者の筒井さんは15年ほど前から、人々の意識を探る「主観的幸福度」の研究を続けている。
戦後、日本などの先進国で経済規模を表す国内総生産(GDP)は上がった。一方で、心の病に苦しむ人や貧富の格差は、むしろ際立ってきた。
「経済的豊かさの物差しだけでは、幸せは測れない」。筒井さんの研究の出発点だった。
ネットアンケートについて相談すると、「まず、いま幸せかどうか、ずばり聞きましょう」と筒井さん。住んでいる地域に満足しているか。さらに生活環境や自然、福祉、街のにぎわい、治安、文化・教育などの評価-。全35項目のアンケートが出来上がった。
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今回、幸福度の結果は7~10点が全体の7割に上り、10段階の平均は7・12点。
「明確な理由は分かりません。米国など外国は高い傾向にありますが…。兵庫の人は国際的ですかね」と笑う筒井さん。
回答者の属性も影響するだろう。今回、神戸新聞の読者らでつくる「ミントクラブ」の会員やネットサイト、紙面を通じて呼び掛けた。そもそも、あまり幸せだと感じていない人は答えない、という傾向もあるそうだ。
しかし、興味深いことも見えてきた。
個別の項目では必ずしも評価は高くなかったのだ。また、地域によって回答の傾向はかなり違った。
1087人が35問に答えた約3万8千通りのデータ。詳しくひもといていくことにしよう。(宮本万里子)
2016/3/24