明治初めまで但馬、丹波、摂津、淡路、播磨の「五国」に分かれていた兵庫県。いまも、言葉や文化に名残は色濃い。
神戸新聞報道部・特報班が今年1~2月に行ったインターネットアンケート。回答者1087人の分析結果にも、違いは鮮明に出た。
アンケートは「幸せですか」という問いで始まり、続いて住んでいる地域について自然環境やにぎわい、教育や仕事の充実度、治安など26項目にわたって評価してもらった。
「各地域の人々にとって何が幸せかが分かりますよ」
「幸福度」を研究する甲南大特任教授の筒井義郎さん(66)に教わった。回帰分析という統計学の専門手法ではじき出したのは、26項目と「幸せ」との関連性。まさに5地域の「幸福の条件」だ。
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実人口に比例し、最も回答数が多かった摂津(神戸、阪神地域)。幸せの条件を、統計上信頼度が高い順に3項目拾ってみた。「希望の収入」「時間のゆとり」「地域のつながり」だった。
都市部が多い地域。収入やゆとりが幸せに結びつく傾向は納得できる。しかし、「地域のつながり」はやや意外な印象も…。
「震災がありましたから」。回答してくれた門充子(かどみちこ)さん(56)=神戸市東灘区=に聞くと、即答で返ってきた。
21年前の阪神・淡路大震災当時、門さんは妊娠中。夫と暮らす同市東灘区の社宅から、同市中央区の実家に帰っていた。避難所で知らない人から体を気遣われ、毛布をもらった。「あの大混乱の中で支えられた経験は忘れない」
では、実際にはどうか。
「地域のつながりがある」との質問に「そう思う」などと答えた摂津の人の割合は約3割。県平均(4割超)より低かった。
つながりの大切さは身にしみて分かっているが、都市部ゆえ、付き合いは希薄になるのだろうか。
「『おしょうゆ貸して』までいかなくても、ちょっとお隣さんの様子が気になる。それが“摂津流”かも」。門さんの見立てだ。
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五国で最も広い播磨。幸福3条件は、「希望の収入」「生活水準の高さ」「遊び場所がある」だった。個性は見えにくい。
回答した会社員の中沢かつひこさん(43)=明石市=は笑った。「そんなもんですよ。だって、いろんな人が住んでますもん」
都市部から山間地まで含む播磨。中沢さんが住む明石市も、新旧の地域が混在する。
PTA活動などに積極的な中沢さん。「地域づくりへの考え方が幅広く、戸惑うこともある」という。ただ、「マイナスには捉えていない」と念を押す。自身は社会人になって、生まれ育った神戸から明石へ。「播磨はええ意味で中途半端。何でもほどほどで、移り住みやすかったんです」
続いて但馬、丹波、淡路はどうだろう。(宮本万里子)
2016/3/25