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 神戸新聞報道部・特報班のインターネットアンケートでは、兵庫県在住の1087人の回答から、個人が感じる「幸福度」や、地域の幸せを左右する条件をたどった。

 幸福度は近年、大学やシンクタンクが調査し、施策や課題解決に生かす自治体も多い。

 これまでの客観的数字だけでは測れなくなった、人々の幸福。新たな物差しをつくろうとする人もいる。

 神戸市西区のニュータウン・竹の台。入居開始から30年、約8200人が暮らす。各地から移ってきた「1代目」ばかりで、高齢化率は4割に迫る。

 「便利で快適だった生活が、急に危うく思えてきて」と地元地域委員会副会長の森川賢子(よしこ)さん(59)。

 気がつけば、公園は荒れ果て、最寄りの大型商業施設に空き店舗が増えてきた。

 何かイベントをしようにも「予算が、人手がない」とつまずく。NPO法人を立ち上げて幼稚園の給食調理を請け負い、年約3千万円の“自主財源”を手に入れた。

 どんな街にしていくのか。森川さんらは住民の声を聞いたり、雑談の場を設けたりと模索を続ける。

 「地域の幸せは、そこに住む人が考えるべきだと思うんです」。竹の台の物差しづくりが始まった。

     □

 今年2月、豊岡市の中筋地区。長さ約12メートル、高さ約3メートルのコンテナへ、子どもたちが息をはずませながら、ジャガイモやタマネギを運び込んだ。

 現代版「雪室(ゆきむろ)」。いわば天然冷蔵庫。保存した地元野菜を学校給食に使う狙いで、地元住民らが実験を行っている。

 「保冷施設は高いし、電気代もかかる。ならば昔ながらの雪国の知恵を生かそうと。皆で汗かいてね」

 地域プロデューサーの岡田宏一さん(45)が説明する。大手企業で17年間、世界各国を回った後、大学院で自然調和型の暮らし方を学んだ。昨年から豊岡に住み、市に地域支援の仕事を託されている。

 「うちも幸福度を調べたいと思って」と岡田さん。豊岡で尋ねてみたいという。

 「大切なものは何ですか?」「足りないものは?」

 地域にとっての宝は何か。岡田さんは、あの雪室も、小さなヒントになるような気がしている。

     □

 今回のアンケートで一つ、気になる数値があった。地域に限らず、若い世代の方が幸せ度(10点満点)が低い=グラフ。

 将来への不安や価値観の揺らぎが感じられる。未来に向け、新たな物差しを見いだす作業は、ますます必要になってくる。

 地域で生きる。それは、足元を見詰め直し、その地にとっての幸せを考え、実現に向けて歩いていく「旅」かもしれない。(宮本万里子)

     ◇

 シリーズ「兵庫で、生きる」は終わります。ご愛読ありがとうございました。

2016/3/29
 

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