細川貂々さんインタビュー
■(3)それでいい、と言われました
ツレ(夫)がうつ病になり、自分も体調を崩した細川貂々(てんてん)さんは、ネガティブ思考の自分から「変わりたい」と思うようになります。
インタビューでは、それからの気持ちの変化を聞きました。
(聞き手・中島摩子)
-ストレスで、体調を崩してしまったんですね。
「変わらなきゃ。漠然と思いましたが、どうしていいか分からない。友人に聞いたら、『いいこと日記を書いてみたら』と言われてやってみたりしたけれど、続きません。なかなか変わりませんでした。そんな悩みをインターネットや本に書いていた40代半ば、知人から精神科医の水島広子先生を紹介されて、会いに行きました」
「今まで、人からは『それじゃダメだから、こうしてみたら?』と言われるばかりだったので、今回もそうだと思って会いに行ったら、水島先生に『それでいいじゃない』と言われて、びっくりしたんです」
-それでいいんですか?
「私も『いいんですか? 本当にいいんですか?』と聞きました。『ダメでしょ?おかしいでしょ?』って。それでも、水島先生は『いいんです、それでいいんです』と繰り返しました。これまで、そんなこと言われたことなかったし、それでいいと言われても、じゃあどうすんの?みたいな…。それでいいと認めてしまったら、私は、すごいダメで悪い人間、になっちゃうんじゃないかという不安もありました」
-たしかに不安になりますね。
「水島先生から『自分を否定するだけでは前に進めないよ。今のまんまだよ』って言われたんです。それなら、認めるしかないかな、と思いました」
「それに、変わりたいと言っているうちはダメなんだそうです」
-えっ? 変わりたいと思ったらいけないんですか?
「変わりたいと思うより、そのままを認めることが大事なんだそうです。変わりたいと言うのは、自分に『ダメ出し』をしているということ。こんな自分は嫌いだから変わりたいとか、こんな嫌な面を変えたいとかダメ出しをしているうちはダメで、嫌な自分でもOKってならないと変われないですって」
-嫌な自分もOKって、なかなか思えないです。
「思えないから、最初は無理に思うしかなかったです。ネガティブ思考になったり、落ち込んだり、怒ったりしても、それでいいって。ただ、それをそのままにしないで、『でも、今はこれでいい』と自分で自覚することがすごく大事でした」
「自覚すると、客観的になれます。客観的になると、自分がどういう位置にいるかが分かる。そうすると、余裕が出る。余裕が出ると、感情に流されないようになって、安定する。安定すると楽に生きられるし、自己肯定感が上がる…。そんな感じです」
-すごい流れです。いつからそう思えるようになったんですか?
「最近だと思います。自分のことをいいよ、って認められるようになると、周りのこともいいよって認められるようになってきました。なんとなく、気持ちが想像できる。相手に対しても余裕が出てきて、感情的にならないんです。はい」
-ネガティブ思考クイーンとの関係はどうなったんですか?
「私が何かしようとすると、クイーンは、足を引っ張ってくるじゃないですか。『お前なんか、どうせダメだろう』とか。そういう時、『うんうん。あんたはいつもそうやって言ってきたよねー』みたいに返す。『もう、そうやって言われても大丈夫だよ』って。そうすると、クイーンは黙る。黙らせられるようになったんです」
「そして、私はもう、ネガティブ思考クイーンを名乗っちゃいけないな、と思うようになりました。実は、他のクイーンが周りに何人も現れたんです。現れたんじゃなくて、それまでは気づかなかっただけだと思います…。私なんて恐れ多い。それほどの力はもうない。クイーンは相当なパワーがないと、名乗っちゃいけないんです(笑)」
(続く)
















