岡本真夜さんが、優しく、そして力強く歌っている。ミリオンセラーの「TOMORROW」だ。落ち込んだ友人のために、岡本さん自らが作った。被災地で、もう一度、口ずさんでみよう。「涙の数だけ強くなれるよ」◆この一年、私たちは涙を流し続けた。犠牲になった六千三百八人の命に。見知らぬボランティアの励ましに。がれきの中から懸命に立ち上がろうとする被災者たちの姿に。マスコミ仲間が伝えてくれる感動のニュースに◆悲しみや喜びの涙だけではない。悔しさや怒りの涙もあった。一片の思いやりもない規則、規制、日本システム。はかどらぬ合意。募るいらだち。街で、避難所で、仮設住宅で、復興半ばのオフィスで、唇をかみながら流した涙は、何十、いや何百トンにも達するだろう◆私たちは、それだけ強くなっただろうか。ちょうど一年前、壊れてしまった街中で「歯を食いしばって頑張ろう」と全被災者が思った。そして全力で前へ進んだ。市場が、医院が復活し、マイホームラッシュの地区もある◆「官」の対応は別に、あの惨状から復活した「民」の力は誇っていい。災害史上、稀有な例ではないか。むろん、道は遠い。復興度65%との調査もある。雨露しのぎに覆ったテントやビニールシートは、一年たってささくれだっている。それが、うち続く厳しい生活を物語る◆ゆえあって復旧が遅れる人への支援と、官を突き動かすこと。これが震災一年の誓いだ。そして同時に支援をいただいた内外の人たちに「涙の数だけ」お礼を言いたい。ありがとう。ありがとう…。
1996/1/17