県外被災者には、復興公営住宅の「仮設入居者優先枠」に対する不満が大きい。寄せられた声には「私たちは自力で生きている」という自負と、「同じ被災者なのになぜ」という憤りが交錯している。
▼自立を目指す人ほど苦労が
最初の仮設住宅に当たり、九十五歳の母と一年住みました。母が東京に引き取られ、仮設は二年しか住めないということで、追い出されないところを求めて仮設を出て、六回引っ越しました。正直者はばかを見るとは思いたくないです。本当に苦労しているのは自立しようと思った人ではないでしょうか。さびしがる母にも会いに行けず、神戸に帰れるのはいつか分かりません。上を向いて歩こう、涙がこぼれないように、の毎日です。(京都府・60代女性)
▼行政の都合優先の施策
自宅が全壊し、何一つ持ち出せずに県外に出た。仮設に住んでいれば、公営住宅入居も優先されるとは思いもよらなかった。仮設撤去を急ぐがために、仮設入居者を優先するのは行政の都合だ。老いて環境風習の異なる地域になじめず、交通も不便、医療機関も少なくて困る。(三重県・60代女性)
▼不公平感募る一方
民間賃貸住宅に住んでいます。家賃補助は受けていますが、年金だけではぎりぎりの生活です。仮設の人も大変だと思いますが、私たちは自力で精いっぱい頑張っています。どうして県外・市外被災者と仮設の人を区別するのですか。あまりにも不公平だと思います。(明石市・60代女性)
▼自分の力で生きてきた
被災の年の六月に現在の公団住宅に入居した。家賃を払っているが、被災者向けの入居期間が過ぎたので出て行くように再三申し入れを受け、来年三月末までが期限となった。以前のマンションも再建されたが、新たなローンは高齢で難しく、公営住宅入居を希望している。仮設住宅では、行政やボランティアのサポートも十分ではなくとも受けられている。私たちが一番、世話にならず自力で生きているのではないかと自負している。(大阪府・60代男性)
▼不安尽きぬ孤独な生活
市街地からあまり離れていないところに帰りたい。もし住宅が当たっても、高齢で健康ではないので孤独な生活に対する不安がとても大きい。慣れない土地で、人との語らいのないさびしい生活は、こちらで嫌というほど味わっている。孤独死する人の気持ちが痛いほどよく分かる。私たちを忘れないで、県外でさびしい思いをしている者に温かい支援を寄せてほしい。(大阪府・70以上女性)
▼もう私たちは必要ないのか
石の上にも三年というが、あれから三年、ここに座っても暖かくなりません。県外に出た私たち高齢者は税金も払えないから、神戸にはもう必要ないのですか。(岡山県・70以上女性)
▼「今後もやむなし」と市/仮設入居者の「優先枠」
復興公営住宅の一元募集では、仮設入居者の「優先枠」が設けられた。四次募集は、県営でほぼ一〇〇%、市営も八〇%だった。
行政側は「仮設住宅は仮の住まい。住環境も悪く、早く恒久住宅に移っていただく必要がある」と説明。今回の募集でも約七千の仮設入居者が落選したことから、まずこうした入居者の対応に力を注ぐ考えだ。
神戸市は、募集割れした市・県営計約二千六百戸を、民有地など早期撤去が必要な仮設の入居者を対象に、個別あっせんし、補充募集を行う。未募集の新築、空き家約四千戸などは、来年夏までに大規模募集を実施する。
しかし、補充募集後も五千人が仮設に残ると予測され、九八年度末の仮設解消を目指す市は、「大規模募集でも八割程度の仮設優先枠を設定せざるを得ない」(住宅管理課)という。
優先枠に対する不満に対し、同課は「理解できるが、いわゆる公営住宅階層が仮設入居者に多く、仮設優先の募集を崩すことはできない。今後は一年当たり千三百・二千七百戸の空き家が発生し、これらの募集を繰り返すことで、不満を解消したい」としている。
1997/12/20