▼利子補給など持てる人向け
被災者向け住宅募集の条件はひどい。解体証明がないと門前払い。私は、全壊証明がありますが、家主は解体していません。家主の問題をなぜ借家人が被らなければならないのでしょう。借家人に家を解体する権利はありません。マイホームの再建・補修には利子補給、ダブルローンには救済策が打ち出されていますが、柱一本建てることのできない私には無縁。しょせん、持てる人向けのものです。(岡山県・60代男性)
▼補修名目で家主は再建
第4次住宅一元募集で被災地の区役所に相談に行ったが、「り災証明があっても解体証明がなければ被災者にはならない」との答えに泣きながら帰った。私のような借家人は、建物の全壊証明が出ているので、敷金の全額払い戻しを受け賃貸契約を解除された。月日を経て帰ってみれば、家主は「解体すると建坪が少なくなるから」と補修の名目で敷地いっぱいに再建している。このような家主のために解体証明がなく、苦しんでいる。(大阪府・60代女性)
▼いつ神戸に帰れるのか
自宅は全壊し、私たち夫婦は年金だけ。二男宅に住んでいますが、できれば神戸に戻りたい。被災高齢者生活再建支援金のことを知り、神戸市に電話で問い合わせたら息子たちが税金を納めているので受けられないとのこと。民間賃貸住宅の家賃補助も、五年以内に県内に帰れる人(帰らない場合は返還)という制限があり、今のところいつ帰れるか分からないので申し込みもできません。(愛知県・60代男性)
▼家賃補助も不公平
五人家族。子どもたちも育ち盛りで食費だけでも赤字です。病院の費用もかかります。民間賃貸住宅の家賃補助を、帰るめどが立たなければ出さないのは不公平です。それでは生活再建は、いつまでたっても出来ないことになります。東灘で六時間生き埋めになり、少しの揺れでも、今でもこわい思いをしています。(愛媛県・30代女性)
▼住民票残した者へ支援策を
高齢者生活再建支援金の支給要件がそろっているのに、住民票と現住所が異なると受け付けてもらえない。一時的転居の場合、転居先の市町村に仮登録制度を設けるなど住民票を残したまま避難している者への支援策も深めてほしいです。(滋賀県・60代女性)
▼人災と感じる地震後の処置
過去を思い悩んだところで天災ゆえ仕方なく、思い切りよく前へ前へと生きていこうと心に言い聞かせています。今は家族バラバラに住んでいますが、まだまだ大変な方のことを思うと愚痴など申せません。一瞬の地震は天災ですが、その後の処置は人災としか感じられません。(東京都・50代女性)
▼「住宅滅失」が条件に 復興住宅の入居で県
仮設住宅の入居者らを除き、復興住宅当選の必要書類となる解体証明書。その書類が入居を阻む「壁」になっている被災者がいることを、兵庫県住宅管理課は「認識している」としながらも、「被災者でだれを優先するかという考え方の中では、現に住宅がなくなった人とせざるを得ない」と説明する。
その考え方の根拠になっているのが、震災直後に制定された被災市街地復興特別措置法。復興公営住宅の入居資格を「住宅が滅失した人」と規定する。しかし、個別の事情に目を向ければ、滅失していなくても住宅に困窮している被災者がいるのは事実。県は「住宅が解体されていない人のうち、公営住宅の提供が必要な人をどう見極めるのかは、実務上も難しい」とも話す。
今後、被災者以外の一般枠として受け付ける公営住宅募集の中で、こうした被災者らに対応をしていきたいというのが現時点での行政の考え方だ。
一方、民間賃貸住宅の家賃補助や、生活再建支援金の要件は、解体証明書がなくても先のような事情は個別に考慮して対応するように変更されている。
1997/12/19