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(5)「種まき」 開花期待し、続く努力
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外資系など投資意欲も

 アメリカ・シアトルの兵庫県ワシントン州事務所。全米がクリスマス休暇をとった先月二十五日、スタッフは企業誘致をめぐる県庁との連絡に追われていた。

 日本に興味を持つ企業はどこなのか。情報が勝負だ。所長の北岡孝統(50)は、百キロ離れた州都オリンピアの自宅を午前五時に出て各種の朝食会に顔を出す。州政府への接触も続ける。

 各国間の競争をくぐり抜け、兵庫・神戸を売り込む。知名度は決して高くない。「大震災が起きた」と説明しても、世界のビジネス界では知る人も限られる。事務所に贈られたある表彰盾には、「HYOGU」と彫り込まれていた。

 そこで昨年八月、ホームページを設けてあるサービスを始めた。日本に関するあらゆる質問に四十八時間以内に応じるのだ。アクセス数はすでに三万件。豪州、パリ、香港の県事務所と共同で回答している。

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 県は、新産業の育成や導入で、中長期的に産業構造の転換を目指す。震災でつまずいた活気を取り戻し、創造的復興を果たすための”種まき”作業だ。

 状況は険しい。

 十一日、県産業復興局長・本庄孝志は通産省と経済企画庁を訪ねた。あきらめムードが色濃い、経済特区「神戸エンタープライズゾーン構想」を視野に入れた上京だった。

 被災地だけの要望では、もう国は動かない。首都圏と大阪湾周辺の自治体に呼び掛けて研究会をつくった。

 「外資の対日投資が日本経済に有用な刺激を与える。その促進のために優遇措置や規制緩和を」と研究報告を基に説明した。国の反応は一般論に終始したが、本庄は「やるべきことはやる。そして国の動きを待つ」とあきらめてはいない。

 震災復興特定事業「上海・長江交易促進プロジェクト」も緩やかながら歩みを続ける。先行きは不透明だが、中心施設となる神戸港国際流通センターは二月末、ポートアイランドに完成する。間口六百四十メートル、奥行き五十メートル。港運八社が建設し、延べ床面積は実に十三万六千平方メートル。西日本一の巨大倉庫である。

 倉庫の稼働率が平均六割強と輸入減に泣く神戸港にあって、この建設は冒険にも見える。しかし、ここでも一つ、種はまかれた。

 「ヘルスケアパーク(仮称)」も民間十六社の参加を得て事業会社が設立された。推進に向けた増資見通しは不況で厳しいが、とにかく、始動はした。

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 二年前、物流基地を造ろうと、香港、シンガポールの大手船会社三社が神戸を訪れた。しかし国は、港湾での外資系の荷物取り扱いをどうしても認めなかった。三社は他国に転進した。

 この経緯を紹介して日本貿易振興会の三上賢悦(60)が確信に満ちて言う。

 「外国人は基本的に単身赴任をしない。多様な国際学校と宗教施設のある神戸は、彼らにとって今も魅力ある土地だ」

 明石海峡大橋の開通、列島の結節点となる道路網。他地域にない強みもある。

 大阪大大学院国際公共政策研究科教授の林敏彦(55)は語った。

 「十年まじめにやって花開くのが経済。神戸は情報通信の基盤などで準備ができている。時節到来となれば、きっと花開く」(敬称略)

(社会部 坂口清二郎、西海恵都子、梶岡修一、宮田一裕)

=おわり=

1999/1/16
 

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