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(4)空き床 「埋まらぬ」危機目前に
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再開発が生む空前のビル群

 五十二棟。総面積八十一万平方メートル。

 進む復興都市再開発。それも事業計画が決まった八割強だけで、向こう約五年間にこれだけのビルが被災地に建つ。甲子園球場二十個分の床面積である。

 その一つ、住宅・都市整備公団が手掛ける西宮市の阪急西宮北口駅前再開発。二〇〇一年春の完成を目指し、十九階建ての高層ビル二棟が着々とその基礎を現している。ところが現地事務所所長・伊藤淑彦の顔色はさえない。東側ビルの一・四階に入る予定だった「コープこうべ」が昨年秋、急に四階への出店を取りやめたのだ。

 「不透明な時代、堅実さを選ばざるを得なかった」とコープ。伊藤はまたテナント探しに気をもむ日々に戻ったが、確たるめどはまだ立たない。

 震災で失われた住宅と店舗を取り戻す復興再開発は、新しいテナントと住民を呼び込むことで経済的に成り立つ。その仕掛けこそがいま、暗雲にも似た懸念材料になっている。

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 事業の内訳を見ておこう。対象は六地区、計三十三・三ヘクタール。今年秋に完成する宝塚・売布神社駅前、来夏の宝塚駅前、二〇〇一年春の西宮北口駅前、同年秋の宝塚・仁川駅前。阪神間四地区に八棟が建つ。

 神戸市内では二〇〇三年度末を目標に、六甲道駅南で十四棟、新長田駅南で三十棟が建設される。八十一万平方メートルのうち、住宅は四千六百七十五戸。懸念の強い商業・業務フロアが約二十万平方メートル。しかも新長田駅南には、事業計画未決定地区が五ヘクタール残っている。

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 例えば、宝塚駅前。宝塚市はビルの三階に店舗を誘致しようと約三百社に当たった。この不況。かつ三階というフロアが敬遠され、成果はゼロ。結局はいま、市で「花をテーマにした博物館」を検討する。

 震災前の事業で、このほど新長田駅前に完成した「ピフレ新長田」。神戸市住宅供給公社は昨年三月、住戸の一般分譲を始めた。契約率は年末で六四%。権利者分を合わせ、百四十二戸のうち四分の一がまだ埋まらない。駅徒歩一分の一等地である。復興事業三十棟の多くは、駅からさらに離れたところに建つ。

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 学識経験者らで復興再開発研究会をつくる神戸大助教授の塩崎賢明は言う。「余分につくった床を売り、事業費を回収する前提が今も成り立つのか。規模の縮小が必要ではないか」

 視線は自然と、再開発地区面積の六割を占める「新長田駅南」に注がれる。

 「何もしなければ、まっさらなビルばかりのゴーストタウンになってしまう」

 地元まちづくり協議会事務局長・東充はこう懸念し、大規模仮設店舗「パラール」の店主らと共に街おこしの仕掛けを考える。神戸市も昨年十月、ビル群の管理費低減とテナント誘致をにらみ、金融機関、損保会社などと「新長田まちづくり会社」を設立した。さらに同地区を対象に、中心市街地活性化法に基づくTMO(まちづくり機関)の設置を検討する。活性化策に、国の補助が受けられる。

 規模縮小の提言がある中で、懸命に続く努力。「街全体の企画力が問われている」と、まちづくり会社専務の前田益孝は話す。(敬称略)

1999/1/14
 

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