震災5年 被災者追跡アンケート


かつての客は戻らず、売り上げは伸びない。営業再開のために受けた融資の返済は、震災から年を経るごとに重くのしかかる―。景気低迷の影響は、今回のアンケートでもとりわけ小売り・自営業者に厳しい。また、勤めを持つ人も約半数が「年収が下がった」と答え、震災後も比較的安定していたサラリーマンの生活からも景気低迷がうかがえる結果となった。
小売り・自営業者の「すでに本格再開」「震災後、別の店舗・事業所で営業」を合わせると七五・六%となった。営業の再開自体はこの一年で進んだといえるが、元の場所での本格再開は四八・八%と半数に届かず、収入の道確保へ、別の場所か仮設店舗で何とか再開にこぎつけた商業者の姿が浮かび上がる。
経営状況は、もっと厳しい。営業を再開した小売り・自営業者では年収が「半分近くに減った」「半分以下になった」と答えた人が六七・五%に上った。営業再開後の課題については、「借金の返済が苦しい」「売り上げが伸びない」「受注が減った」が上位を占めた。借入金でテナントビルを建設・経営する須磨区の六十代女性は「入居者が見つからず、やっと入っても家賃不払いも。銀行の返済を考えると夜も眠れない」という切実な声を寄せた。
「今も休業中」「廃業した」と答えた人は一四・六%。営業再開の壁については「融資が受けられない・額が不十分」「都市計画の遅れ」が、それぞれ四三%(複数回答)あった。
サラリーマンの生活にも不況が影響を与え始めた。震災後に失業を経験したと答えた人は二一・一%に上り、中には二度の失業を経験した人もいた。また、震災前に比べ、五六%が年収減となっており、「二、三割減」が二四%、「半分近く」「半分以下」も八%いた。住宅再建のためローンを組んでいる人が多いだけに、返済が家計に重くのしかかり、生活設計の変更を迫られている。
勤め先が閉店した東灘区の五十代の女性は「六十五歳くらいまで勤め、あとは年金でと考えていたのが、すべて崩れた。年齢が年齢だけに勤め先もない」と高齢者に厳しい雇用を訴え、二重ローンで再建を果たした六十代の男性(東灘区)も「定年まであと二年。退職金も再建につぎこんで残らない。人生が台無しになった」と老後への不安な心境を漏らす。
2000/1/12