震災5年 被災者追跡アンケート

震災五年で、被災地最大の課題「住宅の確保」は大きな節目を迎えた。震災前の土地、別の土地に住宅を再建・購入した人は三九・五%と前年より約五ポイント増え、住宅再建はこの一年で着実に前進した。公的仮設のほぼ全面解消を受け、公営住宅入居者も約五ポイント増え、恒久住宅を確保した人は九割を超えたとみられる。
一方、復興区画整理事業など都市計画の長期化で、資金的なめどがあっても住宅が再建できないケースが今後、深刻化しそうだ。アンケートでも五・九%の人が自力で建てた仮設住宅で仮換地指定を待つ。
住宅の再建は進んだが、残る課題は依然として大きい。持ち家再建後に残った課題について、六〇%の人が「蓄えがなくなった」「なくなる」とし、次いで三八・八%が「ローンの負担が大きい」と答えた(複数回答)。「二重ローン」を組んだと答えた人も二一・二%に上った。
東灘区で自宅が全壊した五十代の男性は「多額のローンを組んで再建したものの、間もなく定年。生活が成り立つのか不安」と訴える。高齢で住宅ローンを組んだ人も多数いるとみられるだけに、今後さらに被災者の生活復興を圧迫していく可能性が懸念される。「住宅再建への支援に何を望むか」の問いには、七六%が「一定額の現金支給」と答え、額については約半数が「五百万円」と答えた。 一方、再建断念の理由では「資金の問題」「高齢」が、ともに五七・六%(複数回答)と最も多く、続いて「都市計画の遅れ」(四八・六%)となった。
震災前、借家だった人で元のまちに戻るのを「断念した」のは、昨年より五ポイント増え五五・八%に。理由は「家主が再建しない」「都市計画の遅れ」「権利関係が複雑」が上位に挙げられた。断念した人の約半数は、復興住宅などの県、市営住宅に入居したとみられるが、まちを離れた人の約半数は今も「絶対戻りたい」「できれば戻りたい」としており、長年暮らしたまちへの愛着は根強い。 アンケート対象のうち須磨・千歳地区は、神戸市の都市計画に基づく復興区画整理事業が行われている。いまだに仮換地指定が始まっていない地区もあり、資金的に建てられるのに建てられない状態が五年を経ても続く。
自力で建てた仮設住宅で自宅が再建できる日を待つ女性(須磨区、六十代)は「仮設住宅解消というが、私たちの生活は仮設となんら変わらない。一日も早く仮換地指定を」と訴える。また、「仮換地指定先に建造物が残っていて自宅を再建できない」(須磨区、六十代男性)という深刻な声も寄せられた。
2000/1/12