神戸最大の“集客イベント”、神戸ルミナリエ。八回目の昨年十二月、観光バスの駐車場には、他府県ナンバーがひしめいていた。
「石川県から日帰り。昼間は、南京町や北野を散策」(家族五人)
「山形県から二泊三日。ルミナリエの後、淡路島泊。二日目は安芸の宮島泊」(女性五人)
「京都から。大阪のアウトレットで買い物し、神戸へ」(家族三人)
多くの人が「ルミナリエがなければ、神戸には来なかった」と話した。
「観光都市」の顔を持つ神戸。観光客数は、震災から三年後、震災前を超える約二千五百万人にまで回復した。しかし、約五百万人が訪れるルミナリエに頼るところが大きい。有馬や六甲の観光客は、震災前の二・三割減が続く。
兵庫県などは「観光復興」を掲げ、約十億円を投じた「See阪神・淡路キャンペーン」などを展開してきた。「兵庫県外客誘致促進委員会」も設置し、日本への団体旅行が解禁された中国などに売り込みをかける。
その手ごたえが現場にはなかなか伝わらない。
神戸ポートピアホテルの宮内賢二副総支配人は「関西に来るアジアの観光客の目的地は京都、大阪。神戸はほとんど知られていない」という。
市内のホテル稼働率は一昨年、震災前と同じ69%に戻ったが、「宿泊の価格が下がっている。稼働率だけでは見えない要素がある」と厳しい表情を崩さない。
そもそも「観光」のスタイルが大きく変わった。神戸市の昨年の「観光動向調査」では、十年前に比べて「一人で来た」が、6%から15・5%に急増した。一方で団体旅行は減少した。
有馬温泉では、団体客が減り、日帰りで昼食と入浴を楽しむ女性らが目立つ。大広間をなくす旅館もある。
有馬温泉観光協会の當谷正幸副会長は「手ごろな価格で長期の湯治に訪れてもらうような試みも必要かもしれない。多様な選択肢が求められる」と話す。「高級」で知られる有馬にも、変化の波が押し寄せる。
にぎわうルミナリエの会場。県外の客に神戸のイメージを聞いた。「おしゃれ」「異国」「お菓子」…。神戸の観光は、こうした好印象に支えられてきた。
「でも、ルミナリエ以外で『神戸の旬』を見つけるのが難しくなってきた」というのは、JTB西日本営業本部の高崎邦子広報課長。国内外の観光地を知り、“本物”を見てきた人々が求めるのは「その地でしか出会えないもの。地元の人しか語れない物語」だ。
その条件を満たすルミナリエさえ、継続が危ぶまれる。企業の協賛金、募金は年々減る。「イメージ」だけではもう、人を呼べない時代。街の底力が問われている。
2003/1/14