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(4)財政危機 市民生活に忍び寄る影
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 昨年秋、神戸市内公立学校の耐震診断の実施率が判明した。被災地でありながら、わずか6%。全国平均の31%を大幅に下回る。

 診断には一棟平均二、三百万円かかる。だが二〇〇一年度の予算は約五百五十万円、〇二年度は五百万円を下回った。

 震災後、診断が済んだのは市内で十校にすぎない。「やりたいという思いはあるが、財政難だ。もどかしい」と、同市教委学校整備課の染田啓市管理係長は言った。

 被災自治体の財政は、危機的状況にある。長引く不況や地価下落などで、市税収入は大幅にダウン。そこに震災復旧、復興に伴って発行した地方債(借金)の償還(返済)が本格化し、財政を圧迫する。

 神戸市の場合、震災復興に伴う市債発行額は、〇一年度までで計一兆千五百億円に達した。今後三年間、毎年四百億円の財源不足が見込まれる。

 昨年秋には行財政改善懇談会が、市バスの敬老パスや障害者年金の上乗せの見直しなどに踏み込んだ報告書を提出。職員給与は〇三年度から三年間、8・4%カットされる。

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 「乳幼児を連れた母親や高齢者らが、遠い本館まで行くのはつらい」。半世紀近い歴史を持つ芦屋市立図書館打出分室。昨年九月、行政改革の一環として市が休館計画を説明したところ、地域住民らは反発。同市は、ボランティアを活用して人件費を減らす案を軸に、存続の方向で検討せざるを得なくなった。

 市内三カ所で進めた区画整理事業、仮設住宅の建設…。〇二年度までの同市の震災関連事業費は二千三十億円に上る。

 市債残高は過去最高。「償還ピークの〇五年度には、支出の三割を借金の返済に充てる計算になる」と、同市の鴛海一吉・行政改革推進担当部長は説明する。

 JR芦屋駅南地区の再開発事業を凍結し、福祉センターの建設も中断。四月からは高齢者のバス運賃助成を削減。母子・父子家庭や障害者への医療助成、奨学金の見直しも検討中。ごみ収集の回数も減るかもしれない。

 が、行革が効果を上げても、予算の使い方に制約を受ける財政再建団体転落の恐れは消えない。

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 返済に充てる公債費が財政を圧迫する度合いを示す「起債制限比率」。昨年秋のデータでは、兵庫県内のワースト九位までを被害の大きかった市町が独占した。

 筆頭は神戸市の24%で、過去約二十年で最悪を記録。芦屋市の20%が続く。ともに震災という事情は考慮されているが、新しい起債を一部制限される20%を超えた。

 ここ三年ほどの間に、被災自治体の多くが地方債償還のピークを迎える。神戸市の試算では〇四年度、同市の起債制限比率は28%まで跳ね上がる。「経験したことのない数字」(同市財務課)が、目前に迫る。

2003/1/16
 

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