一九九五年七月。神戸市須磨区の市立須磨図書館では、職員が汗まみれになって蔵書の整理に追われていた。
あの日から時間が止まっていた。倒れたままの書架。床には、揺れでずれた跡が刻まれていた。
幾つかの公立図書館は避難所として被災者を受け入れた。夏を迎えたころ、仮設住宅への引っ越しが進み、ようやく館内の復旧作業を始めることができた。
明石市の兵庫県立図書館。高さ約二メートルある書架のうち三分の一が倒れ、本をまき散らした。
「利用者がいる時間の地震だったら、間違いなくけが人がでていたでしょう」と同館司書の宮本博さん(50)は話す。
木製や鉄製の重い書架は凶器になる。それまでも知られていたことだった。倒れた書架に、危険性をまざまざと認識させられたという。
神戸市などでは、書架を固定するボルトを震災前より長くした。しっかりと固定し、決して倒さないためだ。書架同士を大きな金具でつないで転倒を防ぐ方式を採用するところも増えている。
安全な図書館へ。知恵と工夫が集まる。(写真部 藤家 武)
2004/8/4