被災地のあちこちで濃緑色のテントに銀色のシートを張る光景が見られた。日差しを反射し、ぎらぎら光る。こもった熱でたぎっているように見えた。心苦しかった。
当時、神戸市東灘区の中野南公園に避難しテント生活していた神戸國男さん(51)。「日中だと、テントの中は気温が四〇度を超えました。シートをかぶせるだけで、体感温度はぐんと下がった」
銀色のシートは、夏場の暑さ対策用に業者が持ち込んだ。効果を聞いた神戸市災害対策本部が発注し、市内に広まった。
テントは自衛隊が被災者の雨よけ用に搬入したもの。公園など避難所外で生活する人が多かったため、震災四日後から各所にまとめて設営した。
神戸市内だけで二十九カ所、五百二十四張り。
分厚いキャンバス地で熱がこもる。しかし、プライバシーは保ちやすい。「体育館よりいい」という人もいて、一年以上「家」代わりを務めた。
陸上自衛隊第三師団司令部(兵庫県伊丹市)の安田孝広報室長が言った。「テントが必要なほど避難施設から被災者があふれてしまったのです。いかに広域にわたり大勢の人が被害を受けたか」
もうあんな光景は見たくない。そう思う(写真部 岡本好太郎)
2004/8/5