広がる不思議空間に思わずシャッターを切った。地面からのぞいた無数の白い板が、日差しを反射し海風に揺れていた。
神戸港・摩耶埠頭(まやふとう)の一角での光景。
白い板はプラスチック製で幅約十五センチ。地上には五十センチしか出ていないが、地下約十三メートルまで差し込まれている。埋め立てたばかりの軟弱な地盤から水分を蒸発させる。
自然の力を利用した工法で、国内では約二十年前に登場。羽田空港の拡張工事に威力を発揮した。神戸港では一九九六年にポーアイ2期工事に初めて導入された。
摩耶埠頭では二回目。新港第六-八突堤の埋め立てにも使われた。
震災後、くし形状に伸びていた突堤の間をがれきなどで埋め、造成地に物流センターをつくる計画が進んでいた。
「神戸の中で、外国の香りが漂う場所の一つだったのに」。消えゆく突堤に、寂しげな視線を送る港湾関係者も少なくなかった。
今、新港突堤跡にはオークションにかける中古車がずらりと並ぶ。
ミナトはリサイクル拠点の役目を果たし始めている。時の流れを感じないではいられない。(写真部 中西大二)
2004/8/6