電柱の上にあるべきトランス(変圧器)が、一面に並び置かれていた。まるで壊れたロボットのように。異様な光景だった。
関西電力が、震災復旧工事で交換したものを神戸・ポートアイランドの自社グラウンドに集積していた。ほかにまとめて置ける場所がなかった。
家屋の下敷きになって破損したもの、火事で焼損したもの。一つ一つのトランスが震災の被害を体現していた。
「通常ではあり得ない壊れ方をしていた」と同社社員の芝村康文さん(32)。芦屋、西宮市の最前線で働いた。
全国の電力会社の応援を得たが、五人チームで一日四本の電柱を復旧させられればいい方だったという。
今年の台風は過去最多、九回の上陸を数えた。塩害が電線やトランスを傷め、停電が明かりを奪った。
強風の中の復旧作業となった。「あのころ、余震におびえながら電柱に登った経験が自信になっている」と芝村さん。
電柱の復旧は、今も一本一本が手作業で続けられている。(写真部 藤家 武)
2004/10/16