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(4)老い 人の輪保つ努力が重要
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保健師(右奥)のアドバイスで体力を確かめる住民=淡路市富島、富島団地集会室
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保健師(右奥)のアドバイスで体力を確かめる住民=淡路市富島、富島団地集会室

保健師(右奥)のアドバイスで体力を確かめる住民=淡路市富島、富島団地集会室

保健師(右奥)のアドバイスで体力を確かめる住民=淡路市富島、富島団地集会室

 「鉄の扉は、安全でよいけど、隣近所の人らの出入りが分からん」

 兵庫県淡路市浅野南、県営災害復興住宅「浅野南鉄筋2号棟」(五階建て、全三十五戸)に一人で暮らす女性(73)が、震災前の生活と比べる。

 「伊丹生まれ。親はサラリーマン。私もOLだった」。縁あって富島の漁師に嫁いだ。早起きと家にかぎを掛けない習慣に面食らった。

 「隣家に向かって『おい』と声を掛ければ、すぐに『おー』と返事が帰ってくる親密な近所付き合いになじんでいった。年寄りたちが、だれかれなく縁側の日だまりに集まり、長話をした」

 震災に遭い、復興住宅へ一緒に入居した夫はすでに亡くなった。区画整理で割り当てられた土地は更地のままにしてある。「戻ってこいという知り合いがいるが、息子も当分は島外だろうから」。現状を維持する。

    ◆

 旧北淡町内で震災後、被災者向けに建設された恒久的な住宅は、市、県営あわせて九棟、全二百二十四戸で、ほぼ満室。六十五歳以上の一人暮らしが、入居世帯の三割近くを占める。

 「十年たち、入居当初ほどの気丈さがなくなった人もいる」。一九九七年から、北淡地域の復興住宅の高齢世帯を訪問する「生活援助員」を一人で続けてきた、市社会福祉協議会臨時職員の小央(こなかわ)久美子さん(48)は心配する。

 訪問の対象は「シルバーハウジング」。十二時間水道を使わなかったり、二時間以上水を出しっぱなしにした時にブザーが鳴るなどの緊急通報システムを備えた部屋を、こう呼ぶ。小央さんの受け持ちは北淡地域内の三十七世帯だが、「ほかの入居者から、『シルバー』に入っていたらよかったという声を聞くので、姿を見かけたら話し掛けるようにしている」と話す。

    ◆

 同市富島の市営コミュニティー住宅「富島団地」(鉄筋六階建て、全三十七戸)。今月十一日、一階の集会室で、市などが月一回続けている健康相談があった。同団地のほか、近くの別の復興住宅や再建した自宅に住む高齢者ら約十人が集まった。

 常連の女性(93)が、初めて訪れた女性(86)の名前を確かめた。「私、あなたのご主人と同い年だった。早くに亡くなられてねぇ」

 「そう、五十四歳で-」と応じた女性は、ゆっくりとハンカチを取り出し、目頭を押さえた。

 常連の女性は、区画整理後の土地に再建した自宅に一人で暮らす。一方の女性は、同市舟木の市営災害復興住宅「小倉団地」(二階建て、全十四戸)で、やはり一人。

 十二年を経て、古い縁がつながった。自治会役員(74)は繰り返す。「まだまだ人の輪がある。失わないよう、努力をせなあかん」

2007/1/17
 

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