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(5)まちづくり なお続く復興への模索
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区画整理が終盤に入った町並み。さまざまな思いが行き交う=淡路市富島
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区画整理が終盤に入った町並み。さまざまな思いが行き交う=淡路市富島

区画整理が終盤に入った町並み。さまざまな思いが行き交う=淡路市富島

区画整理が終盤に入った町並み。さまざまな思いが行き交う=淡路市富島

 「人が減った」。富島の人たちは口々に嘆く。

 淡路市によると、同市富島の「富島震災復興土地区画整理事業」(二〇・九ヘクタール)の対象区域に、同市小倉などを加えた地域の住民は、震災前の一九九四年十二月末時点で約七百二十世帯、約二千二十人。これが二〇〇六年十二月末現在、約五百八十世帯、約千三百八十人となった。世帯数比で約二割、人口比で約三割減った。

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 「もうちょっと話し合って、まちづくりをしたかった。借地・借家だった人らが地区外に移った。残ってもらう方法もあったはず」

 仲井義夫さん(74)が、区画整理を振り返る。元大工。複数の住民団体ができたが、仲井さんは区画整理反対派でつくる会の一つで代表を務めた。「車優先より人のつながりを」「残った家をつぶす事業は必要ない」などと訴えた。

 九七年、旧北淡町は事業計画を大幅に見直した。広い道路で長方形に区切られた街区を新たに整備する当初の方法から、既存の道路を活用して広げ、従来の町並みを残す部分を増やし、移転する世帯や土地の目減りを抑える形にした。

 会はなお反対。仲井さんは九九年夏、代表を退いた。その後、補修して住み続けようとしていた自宅をあきらめ、区画整理に伴う土地の移転に応じた。「ろう城しても周りに迷惑をかける。病気の妻の看病もあった。潮時かと思った」

 仮換地指定は〇五年度末までに完了。しかし、市によると、建物の移転などにつき、地権者と協議中の土地が約三十残る。「仮換地先で店を再建し商売を続けられない」「家族の過ごした場所への思い入れ」などの理由という。

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 「道路が広がり、消防活動やけが人の搬出が容易になった」。タクシー会社社長の河野征弘さん(64)は、区画整理のプラス面を説明する。

 推進派の住民団体の一員だった。富島でも被害の大きい東側の一帯で、自宅の早期再建を望み事業に賛成する人たちが参加していた。九七年五月から、土地区画整理審議会長も務めている。

 しかし、「事業が長引いたため、富島に見切りをつけ、流出する人が多くなった」と感じている。当初、〇四年度末だった区画整理の完了予定期日は、〇七年度末に延びた。この間、タクシー利用率は下がる一方だ。

 当初、検討された商業ゾーンが実現されなかったのを残念がる。三十数人が勉強会を続けたが、まとまらなかった。

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 今、仲井さんは、富島地区の連合町内会長を務め、地域で高齢者のふれあい行事などを世話している。河野さんは〇五年暮れ、北淡町商工会の商業観光委員長として、震災後に途絶えていた歳末セールを復活させ、〇六年も実施した。「あかん、あかんゆうてばかりではあかん」

 十三年目も復興を模索する営みが続く。

(小林伸哉、内田尚典)=おわり=

2007/1/19
 

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