中国自動車道の直下約十四メートル。姫路市安富町。蛍光灯の明かりが続くトンネルに、車の走行音が、かすかに絶え間なく伝わってくる。その中で、研究員が機器を黙々と点検していた。
トンネルは一九七五年、大地震の震源として恐れられる山崎断層を貫いて造られた。長さ約五十メートル。千分の一ミクロン単位で大地の動きを観測する伸縮計が三台設置され、京大防災研究所地震予知研究センター(京都府宇治市)で常時、動きを記録。西日本のほかの十三観測地点とともに監視する。
同研究所の森井亙(わたる)助教(54)は「関西に大きな地震は来ない、との空気が一変した阪神・淡路大震災が、自分の転機になった」と話す。観測を、人々の未来にかかわる仕事と考えるようになった。
観測は、データを積み上げていく地道な作業。同僚の研究員と情報を共有する。目指すは地震予知だが、現状では困難とされる。「作業は石垣の小さな石を積むようなもの。百年先かも知れないが、多くの命を救う手だてになるはず」と力を込めた。(藤家 武)
=おわり=
2009/1/14